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Posted by つくばちゃんねるブログ at

2016年08月27日

‎また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬…⑫武田日向『異国迷路のクロワーゼ』

【連載】"―― #また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった…… "
⑫武田日向『異国迷路のクロワーゼ』(角川コミックス ドラゴンJr.)
https://www.amazon.co.jp/dp/4047125229



19世紀末のパリ。若くして工房の看板を担う少年のもとに、遥か東洋の異国・日本から来た少女が現れる。住む世界の違いからトラブルを起こしつつも、店を守ること、交わした約束を信じること、家族にまつわる悲しい過去…と、互いに共感するものを見つけだしていく。

少年の工房は伝統的商店街"ギャルリ"にあり、そこは時代を先駆ける百貨店"グラン・マガザン"により衰退する趨勢にあった。現代とどこか共通するその舞台設定も心を惹く。  


2016年08月27日

また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬…⑪野口幸一『ディジタル・ホームズ』

【連載】"―― #また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった…… "

⑪野口幸一『ディジタル・ホームズ ミレニアム・ハッカー』(ファミ通文庫)
http://www.amazon.co.jp/dp/4757703457


2000年問題に揺れる東京。"新世界の創生"を目論むサイバーテロ組織の陰謀に巻き込まれつつ、奇才少年が一日一つのおやつとともに都心を駆け巡る、インテリジェンス(知能・情報・戦略・謎解き)バトル。

サイバーテロの手口や、主人公が"相棒"とする万能情報端末といった情報技術のテクニカルさは、当時ならファンタジックなものだっただろう。が、現代ならリアルに"あり"と思える。これが20世紀に書かれたのか…!と唸らせる。

ホームズの血を引く奇才少年、未来的ギア、青年ハッカー、そして警視庁・スコットランドヤード・FBIの特命チーム…。中二な貴方の心を刺激する古典的作品。おやつの存在も彩りを添える。

なお主人公の苗字から、当時の世相も窺われる。奇しくも筆者の見立てとは異なる企業が、現代のIT界を支配することとなったが…。  


2016年05月05日

‎また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬…⑩家永三郎『革命思想の先駆者』

【連載】"――‪#‎また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬……"
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⑩家永三郎『革命思想の先駆者』(岩波新書)
http://www.amazon.co.jp/dp/4004131170

時は明治…。民草に過酷な圧政をなす支配者に、果敢に立ち向かった思想家・植木枝盛。

明治政府によって一度は歴史から消されたが、京都帝大を退学になった異端の研究者・鈴木安蔵によって掘り起こされ、その精神は日本国憲法に甦った。

さらに戦後、彼の生き様を世に伝えようとしたのは、やはり政府と対峙し文教政策を質し続けた反骨の研究者・家永三郎だった。

しかしいま再び、彼らの歴史は埋没してしまっている…。

"支配に立ち上がった英雄"…"消された歴史"…"異端の研究者"…"自由を求める闘い"…
これらのフレーズと難しい漢字が好きな貴方のための一冊(バイブル)。

"く…ッ!! 鎮まれ俺の革命思想…ッ!!!"


  


2016年05月04日

また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった…⑨『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』

【連載】"―― #また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった…… "

⑨原作 みなつき、作画 二ツ家あす『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』(ポラリスCOMICS)
http://www.amazon.co.jp/dp/4593881161

書店の試し読み冊子を見て即買いした作品!
孤独な青年作家が、ひょんなことから野良猫と同居するお話。

帯の「不器用な青年」←わかる
「世話焼きな拾い猫」←?!
"人間のくせにほっとけないんだから…"←?!
「姉属性拾い猫」という新ジャンル…!(°д°

自分の世界にこもりがちな青年の暮らしが、猫というノイズが入ることで乱されたり、危機を救われたり、かつては知ることのなかった大切なものに気づいたり…。

この作品がおもしろいのは、一つのエピソードがまずは青年視点で描かれ、次章でそれが猫目線で描かれる点。青年にとって不可解な猫の行動が、実は猫のこんな思いからだった…っていうのがわかる。

ちょっとロマンチストな青年と、野良育ちでリアリストな猫とのズレもニヤニヤどころ。・∀・

「猫目線」「孤独な作家」といえば『我輩は猫である』の系譜か…!とひらめいたのでこの連載に組み込みました。




  


2016年05月01日

また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬…⑧日下直子『大正ガールズエクスプレス』

【連載】"―― #また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった…… "
⑧日下直子『大正ガールズエクスプレス』(講談社コミックスキス)
http://www.amazon.co.jp/dp/4063408515/

時は大正。舞台はお嬢様学校。世間知らずな女学生たちの目を社会情勢に向けさせようと志を秘める「社会派お嬢様」と、孤児だが驚異的な画力とゆるふわ妄想力を持つ「貧乏乙女絵師」とが手を組み壁新聞(学校側には極秘!)を作るお話。

カタい話題をストレートに発信しても伝わらない――。これは現代の政治コミュニケーションにも通じる主題。二人の合作第一号は空振りに終わるが、再起を図る二人の前に転がり込んできた特ダネは・・・史実上の恋愛スキャンダル「白蓮事件」?!(のような何か。)

頭の切れる社会派お嬢様がシナリオを書き、貧乏乙女絵師が妄想ビジョン全開で描く特ダネ(決して捏造ではない!)は、女学生たちの心に響くのか…?!

歴史的背景をしっかり押さえた上で、史実をアレンジした喜劇やファンタジーをやってのけるのは痛快ですね(^ω^ 三 ^ω^)




  


2016年01月01日

また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬…⑦徳富蘇峰 "田舎紳士論"

【連載】"――‪#‎また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬……"
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⑦徳富蘇峰 "田舎紳士論"

"他人よりもいまだ有力なりと認められず、自家においてもいまだ有力と認めずして、その勢力の漸々と政治上に膨張し来るものは、それただ田舎紳士なるかな。
田舎紳士とは何ぞ。英国にていわゆる「コンツリー・ゼンツルメン」にして、すなわち地方に土着したるの紳士なり。"


  


2015年12月30日

‎また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬…⑥ひらく椥 画『薄桜鬼』

【連載】"――‪#‎また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬……"
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⑥ひらく椥 画『薄桜鬼』(シルフコミックス)
http://www.amazon.co.jp/dp/4048689185



新選組の史実をもとにした歴史ファンタジー。"数奇な運命をたどった新選組の裏には、ある「秘薬」の存在があった"――との世界観。
同時代の、"大英帝国ヴィクトリア朝の史実の裏側には悪魔や死神の存在が"――という『黒執事』と似ている。

迷走と敗走を繰り返したように見える史実の新選組。実際どのような意思決定がなされたのかは歴史の闇の中だが、そこに秘薬という設定が組み込まれることでいかに解釈されるのか。

中盤以降敗戦と死が続く展開が避けられないが、関東、東北、そして蝦夷で戦った隊士の末路を見届ける作品でもある。  


2015年12月29日

‪‎また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬…⑤エミール・ゾラ『ジェルミナール』

【連載】"――‪#‎また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬……"
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⑤エミール・ゾラ『ジェルミナール』(中公文庫)
http://www.amazon.co.jp/dp/4122021146



"キャラクターが可愛らしくいかにもハートフルそうなストーリーかと思いきや、ふたを開ければ残忍冷血な作品"が巷を賑わせる昨今だが、1885年にそれをやってしまったのが本書。

主人公は、職を失い場末の炭鉱町へ流れ着いた青年。見習い鉱夫として働き始めるが、暗闇の現場で彼に指図するのは年端もいかぬ少年…と思いきや、よく見れば女の子だった!「そうだともさ……ほんとに!やっとわかったの!」極貧家庭に運命づけられ、外の世界を知ることなく働いているのである――。

 …ここでティン!ときてしまった貴方、もはや無駄な忠告かもしれないが早まらないでほしい。早くも書を紐解いてしまった紳士は、せいぜい結末にきっと希望があることを信じて読破されたい。

徐々に鉱夫らの信頼を得ていった主人公は、鉱夫一家であるその少女の家に居候することになる――。

 …お願いだから注文は待ってほしい。
 ゾラ先生はまだ本領を発揮していない…!

貧困の炭鉱町に突如激震が走る。炭鉱を所有する資本家が、賃金の大幅切り下げを言い渡してきた!
主人公は激怒する鉱夫らのリーダーとなり、資本家との対決に進む…!

 …おお、さすがは社会派ゾラ先生。当時の社会問題へ真正面から突入します。主人公はこの戦いを経て圧倒的成長するんですねわかります!
 …そう思っていた時期が、僕にもありました――。

ライバル「ヒロイン…たった一人の、俺の嫁…」
活動家「僕と契約して、党員になってよ!」
資本家「愚か者が相手なら、私は手段を選ばない。」
ヒロイン母「あたしらって、ほんとバカ」
過激派「爆薬も、仕掛けも、あるんだよ」

 …そこから数百頁にわたって畳み掛けられる絶望の数々には、自分の中の未知なる感覚が芽生えそう。奇しくも「ジェルミナール」とは「芽生え月」の意。そんな伏線だなんて悔しい・・・!でも(ry

 それでもなお読みたいという貴方、僕はもう止めません。。。
 はなむけにお教えしましょう。最終局面、全てを失い、捨てた主人公が、それまでの悲劇が夢であるかのように希望を唱えて旅立つシーンは痛快です…!痛くて、快い――そんな境地へ連れていってくれる作品です!!  


2015年12月28日

‎また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬…④『小泉八雲「日本の面影」』

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④池田雅之『小泉八雲「日本の面影」』(NHKテレビテキスト「100分de名著」)
http://www.amazon.co.jp/dp/4142230522



19世紀後期に西洋に開国された未知の国、日本。その国を訪れ、江戸から北へ向かい"東洋のアルカディア"米沢に出会ったのがイザベラ・バード(連載第1回参照)。江戸から西へ向かい"神々の国の首都"出雲で暮らしたのがラフカディオ・ハーン、後の小泉八雲である。

八雲曰く、"真の日本の面影は、民の暮らしの中にこそ感じられる"(意訳)。イザベラ・バードの紀行とも、後世の柳田國男の「常民」論とも重なる。西洋を追い求める東京とは対極の出雲でこそ得られた感慨であり、異文化へ敬愛をもって浸った八雲だからこそ達した理解だ。

このテキストでは八雲のルーツに焦点を当てている。父はケルト文化の地アイルランドの生まれ、母は多神神話の地ギリシャの生まれ。そこに始まる八雲の人生の波乱が、日本の面影を篤く感受する伏線になったのだと。

筆者曰く、八雲が特に感じ取ったのは「Ghostly」なものだと。神、霊、聖域、信仰、伝承…。そのようなものが暮らしに混じり合っている有様が、日本の「奥」にはある。このことを発掘し、語ってくれたのが八雲なのだ。  


2015年12月27日

また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬…③家永三郎『植木枝盛選集』他

【連載】"――‪#‎また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬……"
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③家永三郎『植木枝盛選集』(岩波文庫) 他
http://www.amazon.co.jp/dp/4003310713

歴史上にイケメン多しといえども、戦国の真田幸村、幕末の沖田総司はいかんせん広まりすぎた。他の戦国武将、幕末志士らも同様である。しかし!まだ明治前期には有望な人材が埋もれている!その筆頭が植木枝盛だ。


もちろんこの人物は単なる江口洋介似のイケメンではない。明治新政府の苛酷な圧政の中、真の自由を求めて言論により戦い、若くして散った奇才的英雄なのだ…!

時は大政奉還まもない明治前期。危機迫る国際情勢への対処とメイジノミクス(富国強兵)を掲げる長州主導の政権は、文明国として自由と人権を求める全国の人々の声(自由民権運動)を弾圧していた。

土佐(高知県)の民権運動の中心人物であった植木枝盛は、政府に虐げられない自由と人権を確立すべく、当時の日本にまだ無かった憲法の案(私擬憲法)を独自に書き上げた。その名も「東洋大日本国国憲按」。

しかし政府は植木ら民権派を排除して大日本帝国憲法を定め、ほどなく植木とその憲法草案は歴史から抹消された…。だが、明治時代が終わった後その足跡を掘り起こす人物が現れた!その名は鈴木安蔵。京都帝国大学在学中に学生運動で検挙・退学となるが、その後著名な学者に見出されて国会所属の研究者となり、歴史から葬られた植木らの私擬憲法を発掘する。

終戦直後、鈴木は他の学者らと「憲法研究会」を結成。植木らの私擬憲法をもとにした、新しい日本のための「憲法草案要綱」を発表する。この草案はGHQに大きな影響を与え、今の日本国憲法はこれが反映されたものとなっている…!

そして、昭和の時代この一連の歴史に光を当てたのが、今は亡き東京教育大学教授・家永三郎だった。なお奇しくも、東京教育大の屍の上に築かれた筑波大学は、家永の歴史を抹消している…。



  


2015年12月26日

また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬…②アンデルセン&森鷗外『即興詩人』

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②ハンス・クリスチャン・アンデルセン 原作、森鷗外 訳『即興詩人』
(青空文庫) http://www.aozora.gr.jp/cards/000019/card4376.html
安野光雅 口語訳『即興詩人』、2010年。
http://www.amazon.co.jp/dp/4634150107

アンデルセンの原作を、森鷗外が原作を超越するほどに「神訳」したと言われる伝説の物語。文語版の書き出しは

「羅馬(ロオマ)に往きしことある人はピアツツア・バルベリイニを知りたるべし。こは貝殼持てるトリイトンの神の像に造り做(な)したる、美しき噴井(ふんせい)ある、大なる廣こうぢの名なり。」…!

高校古文のスキルが甦って"読める、読めるぞ!私にも文語が読める!!"ってなる。(口語訳版もあります)


伝説①:森鷗外は、軍医としての勤務の余暇を使い、約9年かけてこれを翻訳した。さすが鷗外先生!公務員と執筆業の両立を平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるゥ!

しかも博覧強記の鷗外先生は、異国情緒を表現すべく「傳奇(ドラマ)」、「薄葉鐵(トルヲ≒ブリキ)」とかの中二心をくすぐられる表現を全編にわたってちりばめてらっしゃる…!


伝説②:だがその中身は今で言うギャルゲラノベ(いい意味で)。幼くして親を失い天涯孤独な身の上となった少年が自らに秘められた才能を開花させつついろんなタイプの女の子と出会っていく…とかそれなんてギャルゲ&ラノベ\(^o^)/

ちなみにヒロインのタイプは、1)幼馴染、2)歌姫、3)お嬢様→シスター、4)人妻、5)貧困&盲目 …!(なお男性キャラはライバル的貴公子とか異郷の画家の青年とかが登場♂)

アンデルセン先生の先見性ぱねぇ…


伝説③:主人公の成長とともにその舞台としてイタリアの名所旧跡を巡っていくストーリーは、明治大正の高等遊民(≒高学歴富裕層ニート)たちに「聖地巡礼」ブームを巻き起こしたらしい!

「聖地巡礼(現代的な意味で)」!伝説②のおかげで大正浪漫がこのざまだよ!



  


2015年12月20日

‎また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬…①佐々大河『ふしぎの国のバード』

【連載】"――‪#‎また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった‬……"
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①佐々大河『ふしぎの国のバード』(ビームコミックス)
http://www.amazon.co.jp/dp/4047305138


イザベラ・バードは、明治前期の日本を訪れ、当時"未開・野蛮"とされていた東北地方日本海側と蝦夷地(北海道)を旅した紀行ジャーナリスト。旅の経験を『日本奥地紀行("Unbeaten Tracks in Japan")』に著し、その中で特に山形の地を「東洋のアルカディア(理想郷)」と評した…!

そんなバードさんの旅をマンガ化したのが本作。この手の作品は緻密な時代考証に基づいていて、バードさんが味わった発見や衝撃を絵で一緒に感じられる。騒がしめなバードさんと冷静最強な通訳・鶴吉のコントラストがいい感じ。…実は主役は鶴吉かもしれない件。

近代化によって失われつつあった"もうひとつの日本"を求め、東北日本海側からアイヌの地を目指すというのだから胸熱。折りしも明治日本の近代化遺産が世界遺産化される今、みんなもっとバードさんのことを知るんだ>д<;

なお画風が『エマ』や『乙嫁語り』と似ているので作者はそのアシスタントかも。