2016年02月23日

1881 【現代語訳】植木枝盛「東洋大日本国国憲按」

植木枝盛「東洋大日本国国憲按」(1881(明治14)年)
現代語訳:山本泰弘
底本:『植木枝盛集〈第一巻〉』、岩波書店、1990年。


【現代語訳(目次省略)】

第一編 国家の大原則および権利

第一章 国家の大原則

第一条 日本国は、日本国憲法に従って国を築き、保つものとする。
第二条 日本国には、一つの立法院(法律を定める国会)、一つの行政府(政策を実行する政府)、一つの司法庁(法をつかさどる裁判所)を置く。憲法はその規則を設ける。
第二章 国家の権限
第三条 日本の国家は、国家ならびに政府を成り立たせるために必要な物事を手配することができる。
第四条 日本の国家は、外国に対して外交上の付き合いをし、条約を結ぶことができる。
第五条 日本の国家は、日本人ひとりひとりの自由の権利を損なう規則を作って実施することはできない。
第六条 日本の国家は、日本国民ひとりひとりの私的なことに干渉する行いをすることはできない。


第二編 連邦国家・日本の大原則および権限、ならびに各州についての法

第一章 連邦の大原則

第七条 次に挙げる州を連合して、日本連邦となす。
 日本武蔵州、山城州、大和州、和泉州、摂津州、伊賀州、伊勢州、志摩州、尾張州、三河州、遠江州、駿河州、甲斐州、伊豆州、相模州、安房州、上総州、下総州、常陸州、近江州、美濃州、飛騨州、信濃州、上野州、下野州、岩代州、磐城州、陸前州、陸中州、陸奥州、羽前州、羽後州、若狭州、越前州、加賀州、能登州、越後州、越中州、佐渡州、丹後州、但馬州、因幡州、伯耆州、出雲州、石見州、隠岐州、播磨州、美作州、備中州、安芸州、周防州、長門州、紀伊州、淡路州、阿波州、讃岐州、伊予州、土佐州、筑前州、筑後州、豊前州、豊後州、肥前州、肥後州、日向州、大隅州、薩摩州、壱岐州、対馬州、琉球州
第八条 日本連邦政府を置き、州の単位を超えた日本全体の政治をつかさどる。
第九条 日本連邦は、各州に対し原則としてその州の自由独立を保護すべきものとする。
第十条 日本国内においてまだ州として独立していない所は、連邦政府が管理する。
第十一条 日本連邦は、各州に対し外国からの侵攻を防御する責務がある。

第二章 連邦の権限ならびに各州と関係する法

第十二条 日本連邦は、日本各州の互いの関係について規則を設けることができる。
第十三条 日本連邦は、それぞれの州の内部の事柄に干渉することはできない。その州内の郡や町村などの制度にも干渉することはできない。
第十四条 日本連邦は、日本各州の土地を奪うことはできない。その州自体が賛成を示す場合でなければ、州を廃止することはできない。
第十五条 憲法を改めない限り、日本の州を合併したり、分割したり、州の境界を変えたりすることはできない。
第十六条 日本国内の地域において新たに州をつくるに当たって、その地域が連邦政府と一体化しようとする場合は、連邦はそれを妨げることはできない。
第十七条 外国と盟約を結ぶ権限、国家として諸外国と外交を行う権限は、連邦にある。
第十八条 連邦において用いる単位の基準を制定する権限は、連邦にある。
第十九条 通貨を造る権限は、連邦にある。
第二十条 関税を定める権限は、連邦にある。
第二十一条 宣戦、講和の権限は、連邦にある。
第二十二条 日本連邦は、連邦の管理する場所に灯船(海上で灯台の役割をする船)・灯台・浮標(海上で道しるべとなる浮き。ブイ)を設けることができる。
第二十三条 日本連邦は、駅逓(郵便インフラ)を管理することができる。
第二十四条 日本連邦は、特に連邦に関する事柄のために法律や規則を定めることができる。
第二十五条 日本連邦は、外国貨幣および単位基準で連邦内に通用するものについて、その価値や位置付けを規定することができる。
第二十六条 日本連邦に、常備軍を設置することができる。
第二十七条 日本国内の州と州の間に起こった争いや訴えは、連邦が審判する。
第二十八条 日本の各州と外国の使節との間で公務上のやり取りや行き来があるときは、連邦の行政府を通して行うものとする。


第三編 各州の権限ならびに各州と連邦との関係についての法

第二十九条 日本各州は日本連邦の大原則に背くことを除き、それぞれ独立して自由なものとする。どのような政治体制を行うとしても、連邦がそれに干渉することはない。
第三十条 日本の各州は外国に対し国家の権利や国土に関する条約を結ぶことはできない。
第三十一条 日本各州は各国に対し、連邦や他の州の権利に関わりのないことに限り、経済や警察の分野の件について取り決めを結んだり法や規則をつくったりできる。
第三十二条 日本各州は、現実に賊徒に襲われ急な危険に迫られた場合でなければ戦闘を行うことはできない。
第三十三条 日本各州は、互いに戦闘することはできない。争い事があれば、連邦政府にその判定を委ねる。
第三十四条 日本各州は、現実に強敵に襲われたり大乱が発生したりなどという急な危険の際には、連邦に通報して救援を求めることまたは他の州に対して応援を要請することができる。各州は、他州からこのように応援を要請されたとき、それが真に急な危険からのものであるとわかるときは救援を送ることができる。それにかかった費用は連邦が負担する。
第三十五条 日本各州は常備兵を持つことができる。
第三十六条 日本各州は護郷兵(州の防衛のための兵力)を持つことができる。
第三十七条 日本各州は、連邦の許可がないのに二州以上で盟約を結ぶことはできない。
第三十八条 日本各州は、関係する二州以上で協議することにより、その境界を改めることまたは州を合併することができる。これを行うときは必ず連邦に通告しなければならない。
第三十九条 (空白)


第四編 日本国民および日本人民の自由の権利

第四十条 日本の政治社会にある者を、日本国人民とする。
第四十一条 日本の人民は、自らの意思や承諾によって離脱する場合でなければ、日本人であることを損なわれない。
第四十二条 日本の人民は法律上平等とする。
第四十三条 日本の人民は、法律によってでなければ、自由の権利を損なわれない。
第四十四条 日本の人民は、満足な生命を得、満足な手足や身体や容姿を得、健康を保ち、名誉を保ち、世の中の物を使用する権利を持つ。
第四十五条 日本の人民はどのような罪を犯したとしても生命を奪われることはない。
第四十六条 日本の人民は、法律によるものでなければどのような刑罰も与えられてはならない。また、法律によらずに罪を責められたり、逮捕されたり、拘留されたり、監禁されたり、取り調べられたりすることはない。
第四十七条 日本人民は、ある一つの罪のために繰り返して身体に刑罰を加えられることはない。
第四十八条 日本人民は、拷問を加えられることはない。
第四十九条 日本人民には、思想の自由がある。
第五十条 日本人民は、どのような宗教を信じるのも自由である。
第五十一条 日本人民には、言葉を話す自由権がある。
第五十二条 日本人民には、議論を行う自由権がある。
第五十三条 日本人民には、言葉を筆記し出版して公開する権利がある。
第五十四条 日本人民には、自由に集会を行う権利がある。
第五十五条 日本人民には、自由に団体を組む権利がある。
第五十六条 日本人民には、自由に歩行する権利がある。
第五十七条 日本人民には、住居を害されない権利がある。
第五十八条 日本人民は、どこに居住するのも自由とする。また、どこに旅行するのも自由とする。
第五十九条 日本人民は、どのようなことを教え、どのようなことを学ぶのも自由とする。
第六十条 日本人民は、どのような産業を営むのも自由とする。
第六十一条 日本人民は、法律に定められた手続きによらずに屋内を探索され見調べられることはない。
第六十二条 日本人民は、通信の秘密を損なわれてはいけない。
第六十三条 日本人民は、日本国を去ることや日本国籍を脱することを自由とする。
第六十四条 日本人民は、すべて法の許さない物事に抵抗することができる。
第六十五条 日本人民には、財産を自由に扱う権利がある。
第六十六条 日本人民は、どのような罪を犯したとしても私有のものを没収されることはない。
第六十七条 日本人民は、所有するものを正当な補償がないのに公共のものとされることはない。
第六十八条 日本人民は、それぞれ自身の名で政府に書状を出すことができる。各自は自身のために請願をする権利がある。公立の会社においては、会社の名で書状を出すことかできる。
第六十九条 日本人民には、行政官に任用される権利がある。
第七十条 政府がこの憲法に背くときは、日本人民は政府に従わなくてよい。
第七十一条 政府や役人が抑圧的な行為をするときは、日本人民はそれらを排除することができる。政府が威力をもって勝手気ままに横暴で残虐な行為をあくまでもなすときは、日本人民は武器をもって政府に対抗することができる。
第七十二条 政府がわがままにこの憲法に背き、勝手に人民の自由の権利を害し、日本国の趣旨を裏切るときは、日本国民はその政府を打倒して新たな政府を設けることができる。
第七十三条 日本人民は、兵士の宿泊を拒絶することができる。
第七十四条 日本人民は、法廷に呼ばれ証言を求められる際、どのような理由により訴えが起こされたかを聞くことができる。法廷で自分を訴えた当人と対決することができる。自分を助ける証人や弁護者を得る権利がある。


第五編 皇帝および皇族、摂政

第一章 皇帝の特権

第七十五条 皇帝は、国政の責任を負わない。
第七十六条 皇帝は、刑を受けることはない。
第七十七条 皇帝は、身体にかかる税を負担しない。

第二章 皇帝の権限

第七十八条 皇帝は、軍を支配する権限を持つ。戦争を始めること、講和することの決定権を持つ。他国の独立を認めるか認めないかを決定する。ただし戦争開始や講和を決定したときは直ちに立法院に報告しなければならない。
第七十九条 皇帝は戦争のないとき、立法院の議論を経ないで兵士を徴収または募集することができる。
第八十条 皇帝は外交事務の総裁である。外交官を任命することができる。外国との交際の儀礼を行うことができる。
第八十一条 皇帝は、功績を称える位や勲章を与えることができる。
第八十二条 皇帝は、立法院の決議がなければ、通貨を創造したり改造したりできない。
第八十三条 皇帝は国会の承諾を経て連邦の受刑者を刑から解放したり刑を軽くしたりすることができる。連邦の規定で行われた裁判を他の裁判所に移してやり直させることができる。司法庁が司法権を行使するのを妨げることができない。連邦閣僚の職務上の罪に関わった者には、連邦立法院に反して恩赦を与えたり刑の軽減をしたりすることができない。
第八十四条 皇帝は、立法議会を延長することができる。延長できる期間は、立法議院の承諾がなければ三十日を越えることができない。
第八十五条 皇帝は、軍備を調えることができる。
第八十六条 皇帝は、国政を成り立たせるために必要な命令を出すことができる。
第八十七条 皇帝は、人民の権利に関わること、国家の金銭を費やして行うこと、国家の土地に変更を加えることについては、自身のみの決定で行うことはできない。必ず連邦立法院の議決を経なければならない。立法院の議決を経ないものは、その効力を持たない。
第八十八条 皇帝は、連邦行政府に出向いて政務を執り行う。
第八十九条 皇帝は連邦行政府の長である。常に連邦行政府の全権を持つ。特別に定めるものの他、連邦の行政官・行政職員を任命することができる。
第九十条 皇帝は、連邦司法庁の長である。その名をもって法の判断を下し、また法務官を任命する。
第九十一条 皇帝は、現行の法律を廃止したりすでに定まった法律を受け入れず放置したりすることはできない。
第九十二条 皇帝は、法律によらずに税を取ることはできない。
第九十三条 皇帝は、法律によらずに立法院の議論を拒むことはできない。
第九十四条 皇帝は立法議会と意見が一致しない場合、一度その議会を解散させることができる。こうして解散したときは解散したことを必ず三日以内に各選挙区に通達し、かつ人民に改めて議員を選ばせ、必ず六十日以内に議会を再開しなければならない。一度解散した後再開した議会は、同じ案件について再び解散することはできない。
第九十五条 立法院が議決したことを皇帝が実施しがたいとするときは、議会にこれを再び議論させることができる。このようにするときは、皇帝はその理由を詳しく述べ記して伝えなければならない。

第三章 皇帝、および帝位の継承

第九十六条 日本国皇帝の位は今上(現在の)天皇睦仁陛下が有する。
第九十七条 今上皇帝陛下が退位する際は、陛下の正統の子孫が位を受け継ぐ。もし子孫がないときは、次の順序に従って近い親戚が受け継ぐ。
 今上皇帝の位は、
 第一、嫡出の皇子およびその直系に受け継がれる。
 第二、嫡出の皇子およびその直系がいないときは、嫡庶子およびその直系に受け継がれる。
 第三、嫡庶子およびその直系がいないときは、庶皇子およびその直系に受け継がれる。
 第四、以上の血統の者がいないときは、嫡出の皇女およびその直系に受け継がれる。
 第五、以上の血統の者がいないときは、庶皇女に受け継がれる。
 第六、もしも以上の血統の者がいなければ、皇帝の兄弟姉妹およびその直系に受け継がれる。
 第七、もしも以上の血統に加え皇帝の伯叔父・伯叔母およびその直系までもいなければ、立法院の議決によって皇族の中より後継者を定める。
第九十八条 帝位継承の順序は、男を女より優先し、年長者を年少者より優先し、嫡出子を庶子より優先する。
第九十九条 特別な非常事態があって帝位継承の順序を変えようとすることがあれば、皇帝と立法院との協議によって実行するものとする。

第四章 皇帝の即位

第百条 皇帝の即位は、必ず立法議員が集合した場において行う。

第五章 皇帝の婚姻

第百一条 皇帝の婚姻は立法院の議決を必要とする。
第百二条 女性皇帝の夫は皇帝の権限に干渉することができない。

第六章 皇帝の収入

第百三条 皇帝は毎年国から(空白)万円の俸給を受ける。

第七章 皇帝の年齢

第百四条 皇帝の年齢が十八歳になるまでの間は、未成年とする。十八歳になれば成年とする。

第八章 摂政

第百五条 皇帝が未成年の間は、摂政を置く。
第百六条 皇帝の身に長く事故があって自ら政務を行うことができないときは、摂政を置く。
第百七条 皇帝の身に自己があって摂政を置く際に、皇太子が成年になっているときは、皇太子を摂政とする。
第百八条 摂政は皇帝の名において権限を行使する。
第百九条 摂政の職務の決まりは立法院が定める。
第百十条 皇帝または首相が摂政となるべき者を指名し、立法院が決定する。
第百十一条 皇帝が、皇太子が未成年であるうちに位を譲ろうとする場合、あらかじめ摂政となるべき者を指名した上で立法院の議決を求めることができる。

第九章 皇族

第百十二条 皇太子は身体に関する負担を免れる。
第百十三条 皇太子は毎年国から俸給を受ける。これについては法律で定める。

第六編 立法権に関する諸規則

第一章 立法権に関する大原則

第百十四条 日本連邦に関する立法権は、日本連邦人民全体が有する。
第百十五条 日本連邦人民はみな、連邦の議会制民主主義に携わることができる。
第百十六条 日本皇帝は、日本連邦の立法権に携わることができる。
第百十七条 日本連邦の法律制度は連邦立法院において定める。
第百十八条 連邦立法院は全国にただ一つ置く。
第百十九条 連邦の立法権は、間接制民主主義によって行使する。

第二章 立法院の権限

第百二十条 連邦立法院は、連邦に関する租税を定める権限を持つ。
第百二十一条 連邦立法院は、連邦の軍事規律を定めることができる。
第百二十二条 連邦立法院は、連邦裁判所の訴訟に関する法を定めることができる。
第百二十三条 連邦立法院は、連邦に関する兵制(兵士雇用についての制度)を定めることができる。
第百二十四条 連邦立法院は、連邦の名において国債を発行して金銭を借り、およびその債務を返済する法を定めることができる。
第百二十五条 連邦立法院は、通貨に関する法律を定めることができる。連邦に対する国事犯罪についての法律を定めることができる。
第百二十六条 連邦立法院は、郵便制度を定めることができる。
第百二十七条 連邦立法院は、連邦の通貨を増減したり改造したりする決定ができる。
第百二十八条 連邦立法院は、連邦の共有物を設置することができる。
第百二十九条 連邦立法院は、連邦政府が保証する銀行(政府銀行)の規則を定めることができる。
第百三十条 連邦立法院は、特に必要な調査に関し、連邦の公務員や連邦人民を議会に呼び出す権限がある。また、連邦人民を呼び出して事情を聞き出すことができる。
第百三十一条 連邦立法院は、憲法の許す諸権利を実現するために諸々の規則を定めることができる。
第百三十二条 連邦立法院は、外国人並びに国外の者に関する規則を定めることができる。
第百三十三条 連邦立法院は、連邦行政府が執行する職務に関する犯罪並びに国事犯罪を審議・裁判し、最もふさわしい裁判所に求刑する権限を持つ。
第百三十四条 連邦立法院は、連邦立法院に委ねられた権限の範囲を監査する権限がある。
第百三十五条 連邦立法院は、議員の中でその職に関する命令・規則に違反する者を処分することができる。
第百三十六条 連邦立法院は、過去にさかのぼる法律を定めることができない。
第百三十七条 連邦立法院は、外国と条約を結んだり連盟を組んだりする決定を行う権限がある。ただし、国権の独立を失う契約を結ぶことはできない。
第百三十八条 連邦立法院は、行政部に対し取り調べをする権限を持つ。

第三章 立法議院の権力

第百三十九条 連邦立法議員は、その職を行うにつき発言した意見について、問いただされることはない。
第百四十条 連邦立法議員は、議会開会の間並びにその前後三十日間は、立法院の許可なしに身柄を捕らえられたり取り調べられたりすることはない。ただし、現行犯の場合はこの限りではない。

第四章 議員の選挙および被選挙の法

第百四十一条 連邦議員は、連邦人民が直接選挙する。
第百四十二条 連邦議員は、一州あたり七名と定める。
第百四十三条 現に租税を納めていない者、現に法律上の罪により刑に服している者、政府の公務員は議員を選挙することができない。
第百四十四条 現に法律上の罪により刑に服している者と政府の公務員は議員として選ばれることができない。
第百四十五条 日本各州は、いずれの州の人を議員に選び出すのも自由とする。

第五章 議員の任期

第百四十六条 連邦の立法議員は三年を一期とし、三年ごとに全員を選び直す。

第六章 議員の給与・旅費

第百四十七条 連邦の立法議員は毎年国より三千円の手当金を受ける。また、立法院の会議に出るごとに往復の旅費を受ける。

第七章 議員の制限

第百四十八条 連邦の立法議員は、連邦の行政官を兼ねることができない。

第八章 立法会議

第百四十九条 連邦の立法会議は毎年一回開催する。基本的には十月の第一月曜日に開会する。
第百五十条 議事の多少によって、皇帝は立法会議の期日を延長したり短縮したりできる。しかし議員過半数の同意があるときは、皇帝の命令があるとしても議会が延長・短縮を定める。

第九章 立法会議の開会・閉会、参集・解散

第百五十一条 非常事態があって会議を必要とするとき、皇帝は臨時会を開くことができる。
第百五十二条 連邦会議の開会・閉会は皇帝がつかさどる。
第百五十三条 毎年の常会は、皇帝の命令がなくとも連邦議員が自ら集合して議事を行うことができる。
第百五十四条 皇帝が死去したとき、連邦議会は臨時会を開く。
第百五十五条 議員の任期がすでに尽きているものの、いまだ交代するべき次の議員の選挙が行われていない間に皇帝が亡くなったときは、任期が尽きた前職の議員が集合して、新たな議員が選出されるまで会議を行うことができる。
第百五十六条 立法会議が皇帝によって解散させられた後、皇帝が国法通りに再開しないときは、解散された議会は自ら復活することができる。

第十章 会議規則

第百五十七条 連邦立法議案は、立法院も皇帝も、ともに提出することができる。
第百五十八条 連邦立法議会の議長は、立法院において議員の中から公に選出する。
第百五十九条 会議は一般に、議員総数の過半数の出席ならば開くことができる。ただし、同一の案件について再度以上集会を開くときは、過半数の出席がなくとも議事を行うことができる。
第百六十条 特別に定めた規則のない案件の議事はすべて、出席議員の過半数の表決によって決定する。表決が同数となった場合は、議長の裁量によって決定する。
第百六十一条 連邦の立法会議は公に傍聴を許す。特異な時機においては秘密にすることができる。

第十一章 立法院の決議を国法とする際に皇帝と関係する規則

第百六十二条 連邦立法院において決定した成案は、皇帝に通知して承認を得る必要がある。
第百六十三条 皇帝は、立法院の成案を受け取ったら、必ず三日以内に応答しなければならない。もし熟考の必要があるときは、その旨を申請した上で二十日以内に可否を示す。
第百六十四条 連邦立法院の決定で、皇帝が同意しないものがあれば、その案件を立法院に再度議論させる。立法院が再議するときは、議員総数の過半数の同意があれば再び皇帝に報告した上で成案は必ず実行するものとする。


第七編 行政権に関する諸規則

第一章 行政権に関する大原則

第百六十五条 日本連邦の行政権は日本皇帝が持つ。
第百六十六条 日本連邦の行政府は日本皇帝が統一して管轄する。
第百六十七条 日本連邦の行政権は連邦行政府が実施する。
第百六十八条 皇帝が行政権を行使する上では、国家に唯一の首相を置き、また諸行政分野ごとに各省庁を設け、それぞれの主務長官を任命する。
第百六十九条 皇帝が出す諸々の布告には、首相が署名した上で、当該案件の主任長官が副署して発出する。閣僚の副署がないものは無効である。
第百七十条 皇帝が発する諸々の布告については、首相および当該案件の主任長官が責任を負う。ただし閣僚の副署がないものについては、その閣僚は責任を負わない。

第二章 行政官

第百七十一条 連邦行政官は皇帝の命令に従って職務を行う。
第百七十二条 首相は皇帝に通知した上で諸省庁の長官を任命することができる。
第百七十三条 連邦閣僚は、議案を起草して立法議会に提出することができる。また議会に出席することができるが、表決の数に入ることはできない。
第百七十四条 連邦行政官は、連邦立法議員を兼ねることができない。
第百七十五条 連邦行政官は、その執行する政務について皇帝並びに国民に対する責任を負う。一人の行政官が単独で行ったことはその者が責任を負う。複数の行政官が分担して行ったことはその全員が連帯して責任を負う。
第百七十六条 連邦行政官たる者が、職務上の犯罪や過失について弾劾または責任追及をされている間は、その職を辞めることができない。

第三章 行政府

第百七十七条 連邦行政府は、毎年国費に関する議案を起草し立法議会に提出する。
第百七十八条 連邦行政府は、毎年国費決算書を作成し立法議院に報告する。

第四章 統計局

第百七十九条 国家の歳出と歳入の予算表・精算表は、行政府統計局において作成する。
第百八十条 統計局の長官は、立法院が選任する。
第百八十一条 統計局は、国家の出納会計を検査・監察することができる。
第百八十二条 統計局は、行政各部より会計に関する一切の書類を収集することができる。


第八編 司法権に関する諸規則

第一章 司法権に関する大原則

第百八十三条 連邦司法権は、法律に定めた裁判所において実施する。
第百八十四条 特別の定めのない民事・刑事の裁判訴訟は、司法権の管理下とする。
第百八十五条 非常裁判所を設け、非常裁判官を選任して臨時に司法権を行使することはできない。
第百八十六条 軍の規則を犯した軍人は、軍の裁判所において軍の規則により裁かれる。

第二章 裁判官

第百八十七条 連邦裁判官はすべて立法議院において任命・罷免する。
第百八十八条 裁判官は給与を与えられる職業・任務を兼ねることができない。立法議員を兼ねることもできない。

第三章 裁判所

第百八十九条 連邦裁判所は、憲法に従う外はいかなる制約も受けず、他の機関の管轄を受けない。

第四章 裁判

第百九十条 裁判はすべて、その裁判を開く理由と目的を明らかにする。
第百九十一条 民事裁判では代理人による代言を許す。
第百九十二条 刑事裁判は陪審制を設け、弁護人を付けることを許す。
第百九十三条 裁判は一般市民の傍聴を許して公に行う。風俗を害する事件に限って傍聴を禁じることができる。

第五章 高等裁判所

第百九十四条 諸裁判所の外、日本全国に唯一の高等裁判所を置く。
第百九十五条 高等裁判所は、閣僚の職務にかかる事案を審判する。
第百九十六条 高等裁判所は、皇族に対する犯罪や連邦に対する犯罪のような、通常犯罪とは異なる非常の大犯罪を審判する。


第九編 土地

第百九十七条 国家の土地はすべて、国家の共有とする。
第百九十八条 国家の土地は、立法院の議決によらなければ何一つ動かすことはできない。
第百九十九条 国家の土地は、立法院の議決によらなければ、他国に売ったり、譲ったり、交換したり、抵当に入れたりすることができない。

第十編 租税

第二百条 連邦の租税は各州から徴収する。その額は法律で定める。
第二百一条 連邦の租税は、連邦立法院の議決を経なければ一切徴収することができない。
第二百二条 連邦の租税は、毎年一回立法院において決定する。

第十一編 国会

第二百三条 連邦の金銭は、憲法によらなければ使用したり消費したりすることができない。

第十二編 財政

第二百四条 憲法によらなければ、政府は国債を発行することができない。
第二百五条 憲法によらなければ、政府は諸債務の保証をすることができない。

第十三編 会計

第二百六条 毎年のすべての出納は、予算表並びに精算表に示して必ず国民に公開する。

第十四編 甲兵

第二百七条 国軍の兵は憲法を護持するものとする。
第二百八条 国家の軍隊の指揮権は皇帝が持つ。
第二百九条 国軍の大元帥は皇帝と定める。
第二百十条 国軍の将校は、皇帝が選任する。
第二百十一条 常備兵は、法律・規則に従って皇帝が民衆から募集し、それに応募した者を採用する。
第二百十二条 皇帝は、常備軍を監督する。非常事態が起こった際は、皇帝は常備軍の外に兵士を募集して志願した者を採用することができる。
第二百十三条 他国の兵は、立法院の議決を経なければ雇用することができない。


第十五編 外国人の帰化

第二百十四条 日本国は、外国人の帰化を許す。


第十六編 特法

第二百十五条 国内外に戦乱がある時に限り、その地においては一時、人身の自由、住居の自由、言論・出版の自由、集会・結社の自由などの権利を制限し、取締りの規則を設けることがあり得る。戦乱の事態が終われば必ず直ちにその規則を廃止しなければならない。
第二百十六条 戦乱のためにやむを得ないことがあれば、相当の補償と引き替えに一般市民の私有地・私有物を使用したり、破壊したり、消費したりすることがあり得る。最も緊急の時で、あらかじめ本人に照会し事前に補償をする暇がないときは、事後に補償をすることができる。
第二百十七条 戦乱がある場合には、その間に限りやむを得ないことについて法律を設定することがあり得る。


第十七編 鉄道・電信・陸路・水利

第二百十八条 新たに鉄道を造ったり、電気・通信網を敷いたり、陸路を開拓したり、水路を通したりなどのことについては、立法院の通常会議において議論することができない。立法議員による特別の会議によってこれらについて決定することができる。議員過半数の同意がある案件は実行することができる。


第十八編 憲法改正

第二百十九条 日本国憲法を添削・改正するときは、立法会議における決定を必要とする。
第二百二十条 憲法改正の議事は、その日の出席議員数にかかわらず、議員総数の過半数の同意がなければ決定することができない。


附則

第二百二十一条 日本国憲法施行の日より、憲法に抵触する一切の法律・条例・布告などはすべて廃止する。


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