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Posted by つくばちゃんねるブログ at

2018年04月30日

1874 板垣退助 他「愛国公党本誓」

愛国公党本誓(1874年、立党に際しての決意表明)
現代語訳:山本泰弘
底本:国立国会図書館デジタルコレクション「愛国公党本誓(草案)」

自由民権現代研究会 私擬憲法リマスター 掲載


一 われら人民を生んだ天は、われらに不変不動の普遍的人権を与えた。この普遍的人権とは天が人民一人一人に等しく授けたものであり、人の力で動かしたり奪ったりし得ないものである。

 未開の野蛮な世の中においては、人民の中にはこの普遍的人権を保つことができない者が少なくない。武力による支配体制は、そういった民を虐げ奴隷としてきた。そのために社会に刻まれた弊害は、いまだ少しも解消していない。そのことを認識して改めようともしていない。

 わが国人民が、武力支配に抗う中国やインドの人民と異なる*のはこの点であり、この有様でいて国威だとか国民の富だとかを欲しがっている。どうして得られようか。

 ここに、至誠愛国のわが心は大いに燃え上がる。志を同じくする仲間と、われら人民の天から授かった普遍的人権を確保しようと誓い合った。帝を愛し国を愛する心が深く大きいためである。



一 この政府というものは、人民のために設けられたものとみなす他はない。

 わが党の目的は、ただ人民の普遍的人権を保護主張し、そして自主自由・独立不羈の人民たるようにすることに尽きる。

 それは、帝と人民が一心同体となり、幸福と不幸、平和と緊張を分かち合い、そして互いにこの日本国を持続発展させていく道なのである。



一 普遍的人権を確立しようというのは、天下の偉大な使命である。

 常に各自の忍耐力を養い、たとえ艱難辛苦にさいなまれ続け、百度千度と挫折しようとも、少しも心折れ屈することなく、至誠の心と不動の志を保ち、われらの人生を懸けた天命の仕事として、ただ普遍的人権を保護主張することに力を尽くし、そして死にゆく他に道はない。



 以上のとおり、誓い合うものである。


―――――

*19世紀後期、中国では清朝に対する反乱・太平天国の乱(1851-1864)が起こり、インドでは大英帝国に対するインド大反乱(1857-1859)が起こった。  


Posted by 山本泰弘 at 00:28Comments(0)【現代語訳】

2017年09月09日

1875 【現代語訳&講釈】竹下弥平憲法構想

竹下弥平憲法草案(1875(明治8)年、「朝野新聞」掲載)
現代語訳、解説:山本泰弘
原文(文語)参照元:「竹下弥平の憲法草案」、久米雅章 他『鹿児島近代社会運動史』、
南方新社、2005年、Pp.54-57。

現代語訳のみはこちら

(導入文)
 わが帝国において神聖な賢者である天皇からのメッセージには、「天が君主を設けるのはただただ国民のためである。君主のために人民がいるのではない」とある。
 中国の古の賢者もまた、「世界は人々みんなの世界であって、誰か一人のものではない」と言っている。欧州の古い言葉にも、「わが国は愛すべきだ。ただし、自由というものはわが国よりも愛すべきだ。わが身は滅びても、わが国が滅びることはない。わが国が滅びるとしても、自由というものは滅びることはない」とある。
 私は幼い時、これらの言葉を聞き、心のうちにこう思った。これらの教えはまさに理にかなった真理だ。しかしその真理は必ずしも実行できるわけではない。わが国は、天性の英雄が現れでもしない限り、どうして過去二千五百年のしきたりを思い切って刷新し、先の言葉が示す真理というものを実行できるというのか。
 数年前の戊辰戦争で幕府は転覆したが、時代に逆らう古い頑固なしきたりや考えは、倒幕派の錦の御旗のもとに一掃された。これにより日本国内は一変し、かつての藩は一斉に新政府の県に替わった。この明治維新に当たって天皇が自ら出した「公共のあらゆる選択や判断については、オープンな議論で決める」などとするメッセージは、先に紹介したような、いかなる時代や社会にも通じる普遍的な真理に基づくものだ。明治維新は、その真理を実行に移す契機であった。私が幼い頃に疑わしく思ったことは、みるみるうちに解決してしまった。
 ここでさらに気合を込めて、この自由民権の真理がますます発展し、欧米先進国と並ぶ水準に至ることを望む。その方向で七年経ったものの、政治改革は調子が狂ったかのようだ。私がかつて山よりも重く鉄よりも固いと常々信じていた、維新の基礎である自由民権の誓いがうやむやになってしまうとは。読者のみなさんも疑わしく思われるだろう、自由民権の真理は現実のものになるのかと。
 そんな中、人々の代表による議会を開こうという議論が起こっている。それにどんな利点や欠点があるのか、期はすでに熟したかまだ早いかなどについて賢人たちが議論している。ただ、細かいことにこだわっている場合ではない。あえて言おう、神聖な自由民権の誓いがうやむやにされようとしているときに、それを甦らせるものは議会の他に無い。自由民権の真理が封じ込められようとしているときに、それを救い出すものは議会の他に無い。
 その議会について私が切望する原則を、条文にして記す。



第一条
 明治二年の戊辰戦争終結以来七年経つが、確かに国は歩みをまた一歩進め、君子豹変すべきはまさにこの時である。故にわが帝国は、ますます朝廷の政策を広く深く行き渡らせ、わが帝国の福祉を大きく進展させられるような憲法を確固として定めるべきである。


 竹下弥平は、憲法を定める目的を第一条に持ってきている。まずこの憲法は何のためかを宣言するのだ。
 竹下の憲法でそれは、「わが帝国の福祉を大きく進展させ」ること。「福祉」とはこの時代では「幸福」のことだ。帝国も、朝廷つまり君主も、それらが行う政策も、(人々の、と言い切れないところが微妙ではあるが)幸福のためにあるのだということを確認しているように思われる。
 最近の日本でも、「幸福」とは本当は何だろうかと問われている。「幸福の国」として一時期ブータンが人気になったり、自治体で「幸福度」を数字に表そうという試みもある。「住みたい街ランキング」や「主婦が幸せに暮らせる街ランキング」というのも幸福への関心の表れと言えるだろう。
 国や社会について考える上で、「幸福」に立ち戻るというのはいつの時代も共通なのかもしれない。

 その一方で、この第一条は「裏読み」することもできる。
 「君子豹変すべきはまさにこの時」というのは、「天皇さん、憲法を定めるご決断を!(今でしょ!)」というメッセージを含んでいる。幕府から朝廷に政権交代なされたわけだが、それを押し進めた側の薩摩人の目からも期待したほどには世の中が変わっていっているように思えない。このことは二文目の「ますます朝廷の政策を広く深く」というくだりからも感じ取れる。遠回しにもっと思い切ってほしいと言っているのだ。


第二条
 第一条に言う憲法を定めるのは、五箇条のご誓文の趣旨を拡充するためであるから、立法権を議院(すでに在る左院・右院を改め、新たに設ける左院・右院)にすべて委任するものとする。


 この時代、憲法を定めようと訴える民間人(政府中枢ではない人)の多くは、朝廷が出した「五箇条のご誓文」に、「広く会議を起こし、オープンな議論で政策を決めよう」と述べられていることをその理由としていた。朝廷が自らこのように言っているんだから、それに則って議論や政策決定の大原則である憲法を決めるべきでしょというわけだ。議論する場である国会を開くべきでしょというのも同じロジックだ。
 この少し後の時代に国会や憲法を要求する運動が盛り上がってくると、「天皇さんのそばにいる政府の重役は、天皇さんの志を邪魔してるんじゃないか?」という見方が広まることになる。明治になってからも依然天皇が想像上の存在であった一般の人々からすれば、そのダイレクトメッセージである「五箇条のご誓文」はそれほど重んじられていたのだ。
 
 また、この草案が新聞に載る直後まで、政府の三大権力である立法(法律を作る)・司法(裁判をする)・行政(政策を行う)は太政官といういわば天皇側近の重役会議が全て支配することになっていた。近代的な国家ならそれらは分離するのが常識的ルールとなっているが、竹下はそれに従う形で太政官から立法権を引き離し独立させようと書いた。天皇やその側近が自分たちだけで勝手に国を操ってしまわないような仕組みを入れようとしたのだ。
 これら三つの権力の分離はすでに当時の政府が予定していて、この年のうちに形式的には実施された。しかし竹下の「立法権を議院(議会)にすべて委任する」という書き方は、本来の憲法のあり方にとても忠実で、それゆえに結局昭和戦争終結までの日本(大日本帝国)はそれができなかった。
 本来憲法は、「君主が勝手に権力を振るわないためのルール集」としての意味を持つ。だから君主が勝手に法律を作ることはできないし、「君主のご意向だ」として政府が勝手に法律を作ってもいけない。法律は国民の代表が集まる議会で決定するのが現代の憲法の基本だ。
 しかし大日本帝国の憲法では、法律を作る権限はそもそも天皇にあり、議会はそれに賛否を示す存在とされていた(法律は議会の賛同が必要、ということにはなっていた)。


第三条
 左院は定員を百人とする。
 定員の三分の一は各省の官僚(奏任官四等以下七等まで・判任官八等から十等まで)のうち、担当の仕事に熟練しかつ才能と見識を備えた者を、省ごとに若干名選び出して議員とする。
別の三分の一は、現在の社会一般において著名人として知られた功労者、旧参議・旧諸公のような在野の有識者、および博識で卓見な諸先生(例えば福澤諭吉、福地源一郎、箕作麟祥、中村正直、成島柳北、栗本鋤雲のような知識人・言論人)から選挙して議員とする。
 別の三分の一は、府県の知事・令・参事に命じて、その地域において俊秀老練で、民間社会を熟知し、地域の利害についてことごとく把握する者を選挙させる(これも最初は太政官より地方官に通達して適正に選挙するよう注意する。この小節については各地の地方官が適宜に選任することも妨げない。議院が設立された後には、別に詳細な選挙法を設ける必要がある。それについては別に述べよう)。選ばれた者は各府県の令・参事とともに代議員となって議会に出るものとする(後日、議院を選ぶ法律を整備するまでの間は、令・参事を併せて地方選出議員として取り扱わなければならない)。


 比較的庶民に近いほうから議員が選ばれるこの「左院」は、下院、今の日本で言う衆議院にあたる。
 はじめの三分の一は中級までの官僚から議員を選ぶということ。今の国会議員も官僚出身者がだいぶ多いから、似通っていると言えるだろう。

 次の三分の一はユニークだ。この時代を想像するに、「功労者」や「有識者」としては維新の志士である西郷隆盛や木戸孝允(彼らは「参議」としてすでに政治の中枢にいたが)、旧幕府側では勝海舟や徳川慶喜、そして各地の殿様が想定されたのではないだろうか。
 ここで、「旧参議・旧諸公」と書かれているのに気づく。「参議」は、右のように幕府打倒に活躍し新政府の中心となった人々が占めていた役職だ。一方「諸公」は、各地を治めてきたいわゆる殿様である。幕府を終わらせた新興勢力と、地域に根ざした在来勢力をともに議会に入れて共存を図りたいという願いが込められているように思う。
 そして「諸先生」として名前が挙げられているのは、それまで表立っては政治に関わることがあまりできなかった学者やジャーナリストらだ。

 福澤諭吉は言わずと知れた思想家かつ教育者であり、1875(明治8)年当時は驚異的ベストセラー『学問のすすめ』の著者としていわば時の人だった。
 福地源一郎はジャーナリストや作家として活躍した人であり、明治政府VIPの海外視察ツアーである岩倉使節団や西南戦争にも役人として同行した。
 箕作麟祥は、法律の元祖を築いたとも言われる法学者であり、学制、民法、商法など法典作りに大きな役割を果たした人だ。
 中村正直は、サミュエル・スマイルズの『Self Help』(邦題『西国立志篇』または『自助論』)や、ジョン・スチュワート・ミルの『On Liberty』(邦題『自由之理』または『自由論』)といった当時の西洋思想を代表する本を翻訳した学者だ。これらは福澤の『学問のすすめ』と並ぶベストセラーだったという。ちなみにお茶の水女子大学の祖(前身の女子高等師範学校初代校長)でもある。
 成島柳北は文筆家・ジャーナリストで、自由民権派を代表する新聞「朝野新聞」を創刊した人。明治政府の言論弾圧に抵抗する記事を繰り返し載せ、禁固刑、罰金刑、新聞発行停止処分を食らっている。
 栗本鋤雲は医師から江戸幕府の重役になった人で、幕府最後の局面で外交交渉を担っていた。その手腕から明治政府からもスカウトされていたが、幕府に恩を受けたからとしてそれを断ったという。その後は当時の有力紙「横浜毎日新聞」や「郵便報知新聞」のジャーナリストとして活躍した。

 このような才能を持つ人々を言い表す言葉が無かったから、竹下は「誰々のような先生」と書くしかなかったのだろう。「ジャーナリスト」や「思想家」という言葉など無かった時代であり、さらに言えば新聞というものも今のように地位が確立したメディアではなかった。(想像するに、現代におけるブログや同人誌と同じ程度の存在感ではないだろうか?)
 新しい時代には伝統的な権力者よりも、視野が広くいろいろな考え方や外国の事情を熟知する学者やジャーナリストに存在感を発揮してもらいたいとの願望が込められているのだろう。

 残る三分の一は、地域の代表者を選び出すこととなっている。「地域の利害についてことごとく把握する者」を選ぶとはっきり書いていることにも注目だ。
 現代の日本の国会は、国全体(や広域ブロック)で選ばれる(比例代表選出)議員と、各地域から選ばれる(選挙区選出)議員とがバランスよく構成するようになっている。
 各地を治めていた藩が無くなって、日本という統一国家が始まったこの時代、日本全体の利益を考える人と並んで地域の利益を考える人をしっかり議会に入れようという発想はなかなか思慮深いものと言えるだろう。今の日本の国会に規定されている国と地域のバランスを先取りしたとも言える。


第四条
 右院の議員は、現在勅任官以上の行政官の者および皇族・華族の中より選挙(第三条の記述に同じ)されるものとする。その定員は百人に限定する。ただし、司法官と武官は議員になれない。


 貴族の身分を持つ人を中心とするこちらの「右院」。皇族・華族(前に挙げた「各地の殿様」はここにも含まれる)だけでなく最上級の官僚も合わせた中から選ばれることとなっている。
 江戸時代には全くと言っていいほど政治に関わらなかった皇族や公家(くげ。朝廷に仕える各種の伝統芸能や儀礼の専門家)だけの中から選ぶのでは不安があったからか、これまでの時代の統治のプロである各地の殿様(またもや登場)と、新政府の司令塔である上級官僚を加えたのではないだろうか。
 竹下は議会の制度を詳しく書いてはいないが、右院のメンバーが政治に疎い人々ばかりであれば、竹下が工夫を凝らして構成した左院の決定を全て阻んでしまうかもしれない。近年の日本もいわゆる「ねじれ国会」となり、衆議院と参議院の議決が異なって法律が作られない時期があった。

 なお、ただし書きの「司法官と武官は議員になれない」というのは権力分立の基本だ。先ほど君主や政府が法律を決めてはいけないと書いたが、司法つまり裁判所や軍が法律を決めてもいけない。簡単に言えば裁判所は裁判で、軍は武力で人に強制力を発揮できる。そういう力を持つ人々が法律を決めるのに参加してしまうと、その力で国民を取り締まる方向の法律が作られやすくなってしまう、という懸念がこのルールの理由だ。


第五条
 太政大臣(行政の長)および左大臣・右大臣は左右両院の選挙によって定めるものとする。


 太政大臣は、今で言う総理大臣。左大臣・右大臣は副総理に当たる。
 総理大臣を国会での投票で選ぶというのは、まさに今の仕組みそのままだ。実際の明治憲法ではどうだったかというと、表向き天皇が任命することになっていたものの、実態はいわば「密室」。選ぶための決まりが無く、政界の長老である「元老」(後に「重臣会議」)のメンバーが話し合いで次の総理大臣を決めていた。
 その点、竹下の案は最も基本的でわかりやすい。天皇(というかその裏方となって物事を決めてしまう人)を介在させることなく、シンプルな仕組みで国民の代表が決まるようになっている。


第六条
 左院・右院を、開会・閉会するのは、天皇陛下の特権である。


 ここは天皇の出番だ。天皇は「広く会議を起こし、オープンな議論で政策を決めよう」としているのだから、その場である議会の開会宣言を行い、オープンな議論をしなさいと太鼓判を押すイメージだ。ここは君主としての特権の振るい所といったところだろう。
 これも現代の国会で行われていることで、毎年2,3回、天皇さんが国会の開会式で「おことば」を述べている(ただしこちらは君主としてではなく日本国民の象徴として行う儀式であり、竹下の「帝国」像とは意味合いが異なる)。
 いずれも、国の政治のおおもとの責任者(「主権者」)が、議会に意思決定を委ねることを表すものだ。


第七条
 帝国の歳入・歳出を定める特権は左右両院にある。

第八条
 帝国の憲法を定める、もしくは改訂・加筆・削除することは一切すべて左右両院の特権である。よって、たとえ行政官、司法官、武官が、どのような権威をもってしても、どのような場合であっても、議院の持つ立法の権限をわずかでも侵害することは決してできない。このことは、国を立てるにあたり最も重んじるところである。


 憲法を決めたり変えたりできるのは誰か。憲法というものが、教科書上の、ある意味雲の上の存在のように思われる私たちにとってはビシッと答えにくい問いだ。本来の正解は国民だが、行政のトップである内閣や、裁判所が、憲法に関する微妙な問題を(「憲法の解釈」という手段で)先んじて片付けてしまっている現実もある。
 そこに、やはり憲法の基本に忠実な竹下の条文は響いてくる。憲法を決めるのは国民の代表を集めた議会。行政も、裁判所も、軍も、手出しをすることは許されない。竹下はあくまで議会を中心にした国のあり方を考えた。
 (ただし現実的には、裁判所が議会の無謀な立法を止める仕組み(「違憲立法審査権」)が必要である。これが無いと議会は少数者の権利を侵害する立法ができてしまう。)
 せっかく憲法のもと国民の代表者が集まる議会で憲法や法律が決められるという仕組みが始まっても、少しするとそれが建前になって実際は官僚や軍が国を動かすようになった、という悪いシナリオを封じるための条文だ。
 明治憲法にはこの基本が甘かったために、軍が政治に強い力を持ち昭和戦争への道を突き進むことになった。そして現代も、政治における官僚の力が強すぎるんじゃないかと言われ続けている。
 竹下の書いた基本に忠実な憲法案は、いつの時代にも通用する「不朽の基本」なのだ。  


Posted by 山本泰弘 at 13:34Comments(0)【現代語訳】

2017年05月03日

1881 【現代語訳】千葉卓三郎「五日市憲法(日本帝国憲法)」

五日市憲法草案(日本帝国憲法、1881年起草(伝)、1968年発見)
現代語訳:山本泰弘
底本:あきる野市デジタルアーカイブ所蔵 五日市憲法草案書き下し文
自由民権現代研究会 私擬憲法リマスター 掲載


日本帝国憲法
   第一篇 国帝
      第一章 帝位相続
      第二章 摂政官
      第三章 国帝権理
   第二篇 公法
      第一章 国民権理
   第三篇 立法権
      第一章 民撰議院
      第二章 元老議院
      第三章 国会権任
      第四章 国会開閉
      第五章 国憲改正
   第四篇 行政権
   第五篇 司法権


日本帝国憲法
陸陽仙台千葉卓三郎草

第一篇 国帝

第一章 帝位相続

1.1.日本国の帝位は、神武帝の正統な後継者である現在の帝から、その子孫へ代々受け継がれる。帝の後を継ぐ順序は、次の条文のとおりとする。
1.2.日本国の帝位は、帝の正妻との間の男子およびその男系の子孫に代々受け継がれる。帝と正妻との間に男子がいなければ、他の妻との間の男子およびその男系の子孫に代々受け継がれる。
1.2.日本国の帝位は、嫡皇子(皇后との間の男子)及びその男系に代々受け継がれる。その該当者がいないときは嫡衆子(皇后以外の正室との間の男子)及びその男系に代々受け継がれる。その該当者もいないときは庶皇子(側室との間の男子)及びその男系に代々受け継がれる。
1.3.帝に男子がいないときは、帝位は帝の兄弟及びその男系に代々受け継がれる。
1.4.帝に男子も兄弟もいないときは、帝位は帝の伯父・叔父(帝の父の兄弟)及びその男系に代々受け継がれる。
1.5.帝に男子も兄弟も伯父・叔父もいないときは、帝位は皇族の中で現在の帝に最も血縁が近い男性及びその男系に代々受け継がれる。
1.6.皇族に男性がいないときは、帝位は皇族の中で現在の帝に最も血縁が近い女性に受け継がれる。ただし、女帝の配偶者は帝の権限に関与することができない。
1.7.以上の帝位承継の順序は、総じて年長者は年少者に、嫡出子(正妻との間の子)は庶子(側室との間の子)に、子は親に優先する。
1.8.特殊な事情により、以上の帝位承継の順序を超えて帝位継承者を定める必要があるときは、帝はそのことについて国会に提案し、国会議員三分の二以上の賛成で可決されることが必要である。
1.9.帝室及び皇族の必要経費は、国が相応の額を提供することができる。
1.10.皇族の地位は、三代まで受け継がれる。四代目以下は姓を得て一般平民となる。


第二章 摂政官

2.1.帝は、満18歳で成人となる。
2.2.帝は、成人に達するまでの間は摂政官を置くことができる。
2.3.成人した帝であっても、自ら政務を行うことができない事情があり、国会がその事実を認めたときは、その事情が存在する間は摂政官を置くことができる。
2.4.摂政官は、帝もしくは太政大臣が皇族の近親者の内から指名し、国会で三分の二以上の賛成で可決されなければならない。
2.5.成人した帝が自ら政務を行うことができない場合で、次の帝位継承者が満15歳に達しているときは、その人物を摂政官に任じる。この場合は、帝もしくは太政大臣から国会に通知すればよく、議決は必要ない。
2.6.摂政官は、その地位にある間、名誉や爵位を授けることや軍の儀礼に関すること以外の帝の権限を代行する。
2.7.摂政官は、一般には満21才以上の成人でなくてはならない。


第三章 国帝の権利

3.1.帝の身体は神聖であり侵害することはできず、何らかの責任を負うことはない。もしも帝が国政に関し行ったことにつき国民に対して過失があった場合は、担当の国務大臣がその責任を追う。
3.2.帝は、立法・行政・司法の三部門を総じて取り締まる。
3.3.帝は、自らの意思で執政官を任用・免職する。また、元老議院の議員及び裁判官を任命する。ただし、終身官・終身議員は法律に定められた場合を除いて免職することができない。
3.4.帝は陸海軍を総じて監督し、武官を配置し軍隊を整備して必要に応じこれらを派遣することができる。ただし、それらの昇進・免職・退職については、法律により定められた規則に則って帝が決定する。
3.5.帝は、軍隊に対し憲法に違反する行為をさせることはできない。かつ、戦時下でないときは、元老議院・民撰議院の承諾がなければ国内に臨時に兵隊を配備することは決してできない。
3.6.帝は、貨幣を製造・改造する権限を持つ。貨幣については、法律で詳細を定める。また、帝自身の肖像を貨幣に入れることができる。
3.7.帝は、爵位や貴族の位を授けたり、法律に則って勲章や栄誉などを授けたり、法律で定められた範囲の恩賜金を授けたりすることができる。ただし、国の支出でこれらの費用を賄う場合は、国会の可決がなければならない。
3.8.帝は、何も義務の生じない外国の勲章などを受けることができる。また、帝の承諾があれば皇族もそれらを受けることができる。ただし、いかなる場合でも、帝に仕える者は帝の許しなくして外国の勲章や爵位、官職を受けることができない。
3.9.日本人は、外国の貴族の称号を受けることができない。
3.10.帝は、特命を発して、すでに決着した刑事裁判を白紙化し、いずれの裁判所にでも裁判をやり直させる権限を持つ。
3.11.帝は、裁判官の判決により処された犯罪者の刑罰を軽減したり免除したりする権限を持つ。
3.12.帝は、重罪の刑に処されて生涯にわたり公民権を剥奪された者に対し、法律の定めに則り国会に提案し可決を得て、罪を許し権利を復活させることができる。
3.13.帝は、全国の裁判を責任を持って監督し、それらが万全になされるよう見守る。また、法で定められた罪を犯す者があるときは、帝の名をもって追跡・逮捕・求刑し、断罪する。
3.14.司法関係者を告訴する者があるときは、帝はその訴えを聴き、参議院の意見を求めた後に、訴えられた者を停職にすることができる。
3.15.帝は、国会を開くよう求め、国会の開会・閉会、延期を行う。
3.16.帝は、国益のために必須と判断するときは、国会が開かれていないとき臨時に国会を開くことができる。
3.17.帝は、法律案をはじめ、自ら適切と思う議案を国会に出す。
3.18.帝は、国会の決議を得ることなく特権によって外国との各種の約束を結ぶことができる。ただし、その約束が国民に密接に関係し、または国の財産を費やし、もしくは国の領域を変化させる条約及びその修正である場合は、国会の承諾がなければ効力を持たない。
3.19.帝は、戦争の開始を宣言したり、戦争の講和を行ったり、その他国家間の友好・同盟などの条約を結んだりする。ただし、そのことを直ちに国会の両院に通知しなければならない。かつ、これらの他にも帝が国家の利益や安寧と密接に関わると考える行為については、行ったら直ちに国会の両院に通知する。
3.20.帝は、外交事務を総じて取り締まる。外国に派遣する使節、公使、領事を任命・免職する。
3.21.帝は、国会が決議して行った提案について、認めるか拒否するかの判断を下す。
3.22.帝は、国会の決議に印鑑を押して最終決定することをはじめ、立法権に属するあらゆる職務について最終判断し、それらを法として公布することができる。
3.23.帝は、日本国内に外国の兵隊が入ることを許可することと、後継者に帝の座を譲るために退位することの二つについては、特別の法律に従って国会の承諾を得なければ行うことができない。
3.24.帝は、国の安寧のために必要な場合には国会の各議院(民撰議院・元老議院)を停止し解散させる権限を持つ。ただし、議院を解散させるのと同時に、40日以内に新しい議員を選挙するとともに2か月以内に議院を新たに開始することを命じなければならない。


第二篇 公法

第一章 国民の権利

4.1.次に掲げる者を日本国民とする。
 ①日本国内で生まれた者
 ②日本国外の生まれでも、父母が日本国民である者
 ③日本国に帰化した外国人 ただし、帰化外国人が得る権利は別途法律で定める。
4.2.次に掲げる者は、政治参加の権利を停止する。
 ①心身に重大な障害がある者
 ②禁錮刑・流刑の判決を受けた者 ただし、刑期が終われば政治参加できる。
4.3.次に掲げる者は、日本国民の権利を失う。
 ①外国に帰化し、外国の国籍となった者
 ②日本国の帝の許しを得ずに、外国政府から官職・爵位・称号・恩賜金を受けた者
4.4.日本国民は、各自の権利と自由を享受できる。これは他から妨害することはできない。かつ、国の法はこれを保護しなければならない。
4.5.日本国民は、憲法が定める一定以上の財産や知識がある者は、国の政治に参画して賛否を発言したり議論したりする権利を持つ。
4.6.日本国民は全て、民族・戸籍・地位・階級の違いを問わず法律のもとに平等の権利を持つ。
4.7.日本国民は全て、日本全国において同一の法が適用され、同一の保護を受ける。特定の地方・家系・個人に特権が与えられることはない。
4.8.日本国に居住・滞在する人は、日本国民か外国人かを問わず全て、身体・生命・財産・名誉を保護される。
4.9.法律は、制定された時より過去に遡って適用されてはならない。
4.10.日本国民は全て、法律を守っていればいかなる内容でも、政府からの事前検査を受けずに自由に思想・意見・論説・図や絵を表現したり、出版・発行したり、世間の人々に講談・討論・演説したりして公に広めることができる。ただし、その弊害を防止するために必要な措置を定めた法律に違反した場合は、その刑罰を受けなければならない。
4.11.思想の自由の権利に関わる犯罪は、法律に定める機会と方式に従って裁かれなければならない。思想表現による犯罪については、法律に定める特例を除き陪審員がその重さを判断する。
4.12.日本国民は、法律に定められていること以外は何らかのことを強制的にさせられたり止められたりしない。
4.13.日本国民は、個人でも団体でも、法律に定められた方法に従って、帝、国会、その他政府の機関に対して請願や提案を行う権利を持つ。そのような請願や提案を行ったことを理由に罪に問われたり刑を受けたりすることはない。もし、政府の行いや国民同士の関係、その他どのようなことでも、国民自身が不条理と思うことがあれば、帝、国会、その他いずれの政府の機関にでも請願や提案をすることができる。
4.14.日本国民には、華族・士族・平民のいずれかであるかを問わず、その才能や人物に応じ国家の官僚や軍人として就職する機会が平等にある。
4.15.日本国民は、どんな宗教であっても自由に信仰してよい。ただし政府は、常に国の安寧と宗教・宗派間の平和を保つために適切な行動をとることができる。また、国家の法律が宗教的なものであってはならず、そのような法律は憲法違反で無効である。
4.16.いかなる労働・工業・農耕でも、公の秩序や風俗に反し国民の安寧や健康を損なうものでなければ、禁止されることはない。
4.17.日本国民は、国の安寧を揺るがす手段や意図によらず、または武器を持つことなく、平穏に団体を作ったり集会を開いたりする権利を持つ。ただし、それらの行為による弊害(デメリット)を防ぐために必要な規則を法律で定める。
4.18.日本国民は、信書の秘密を探られることはない。法律の定めに基づき法のもとに適切な捜査の場合や、戦時中の場合、または裁判所の判断に基づく場合を除き、日本国民の信書を没収することはできない。
4.19.日本国民は、法律に定められた機会と規則に基づいた場合でなければ、身柄を拘束されたり、呼出・連行・監禁されたり、強制的に住居に踏み込まれたりすることはない。
4.20.日本国民各自の住居は、国内どこであってもその人の自由である。住居を他の者が邪魔してはならない。もし、家の主の了解なく、または家の中から招いたわけでなく、災害や危険を防ぐためでもないのに夜間に他人の家に侵入することはできない。
4.21.日本国民は、財産を所有する権利を持つ。いかなる場合であっても、財産を没収されることはない。公の規則に基づき、公の利益のためであることを証明し、かつその時点で適切な額の代金を前払いするのでなければ、国の機関に財産を買い上げられることはない。
4.22.日本国民は、国会において決定し、かつ帝が許可した場合でなければ、税を課されることはない。
4.23.日本国民は、その者の事件を担当する裁判官あるいは裁判所にでなければ、法の裁きを受けることはない。たとえ刑法やその他の法令上の規則に基づいていても、他の機関に裁かれることはない。
4.24.法律の条文に明記されたことでなければ、身柄を拘束されたり逮捕されたり、罪に問われたり刑罰を与えられたりすることはない。かつ、一度罪や刑が確定した事件について再び罪を問われ刑を与えられてはならない。
4.25.日本国民は、法律で定める場合を除いて、逮捕されることはない。逮捕する場合は、裁判官が署名した文書によって逮捕の理由と罪を訴えた者の名と証人の名を容疑者に知らせなければならない。
4.26.逮捕された者は、二十四時間以内に裁判官の前に出さなければならない。逮捕した者をすぐには解放できない場合は、裁判官がその理由を明記した文書を出すことで、拘束し続けることができる。その手続きは可能な限り迅速に、法律で定める期限内に行われなければならない。
4.27.逮捕され拘束された者が求めるならば、裁判官が示した事件についてすぐに控訴・上告できる。
4.28.一般の犯罪で逮捕された者は、法律の定めによって保釈される権利を持つ。
4.29.誰しも、正当な裁判官以外に罪を裁かれることはない。このため、臨時裁判所を作ることはできない。
4.30.政府に逆らった罪を理由に死刑とされてはならない。
4.31.法に基づかないで逮捕が行われた場合は、政府は逮捕された者に対して損害賠償金を払わなければならない。
4.32.日本国民は属性を問わず、法に基づいた徴集や募集に応じて海軍・陸軍の一員となり、日本国の防衛に当たることができる。
4.33.日本国民は誰しも、所有する財産の大きさに応じて国家財政を支える税金を負担しなければならない。皇族といえども、税負担を免除されてはならない。
4.34.日本国民は、国や公の機関の債務を負担しなければならない。
4.35.子の教育において、何をどのように教えるかは自由とする。しかし、子に初等教育を行うことは保護者の逃れられない責任である。
4.36.府県の首長は、国の法律によってその地位や権限が定められなければならない。府県の自治は各地の風習や慣例に基づくものであるため、それに対し干渉や妨害をすることはできない。府県の自治の領域は、国会といえども侵害することはできない。


第三篇 立法権

第一章 民選議院

5.1.民選議院は、選挙法によって定めた規定に従い、直接選挙によって選ばれた代議士によって構成される。人口二十万人に一人の割合で議員を選出する。
5.2.代議士の任期は三年とし、二年ごとに半数ずつを改選する。当選回数に制限はない。
5.3.次の全てに当てはまる者が、代議士として選ばれる資格を持つ。
 ①日本国民
 ②聖職者(神官・僧侶・宣教師・教員など)以外の者
 ③政治参加の権利を持つ者
 ④満三十歳以上の男性
 ⑤法律で定める額の財産を持つ者
 ⑥所有する土地から収入を得ている者
 ⑦法律で定める額の税金を納めている者
 ⑧文武の常識をわきまえた者
5.4.前条に示した条件を満たす日本国民のうち、半数は自らの居住する選挙区からのみ、もう半数は全国どこの選挙区からでも、代議士に選出されることができる。ただし、民選議員の代議士と元老議員の議官を兼ねることはできない。
5.5.代議士は日本国民全体の代表者であり、選出された選挙区の代表ではない。よって、選挙区民の指示に従う必要はない。
5.6.次のいずれかに当てはまるものは、民選議院の選挙で投票する資格を持たない。
 ①女性
 ②未成年者
 ③財産権が制限されている者
 ④知的障害がある者
 ⑤住居が無く、他人の使用人となっている者
 ⑥政府の助成金を受けた者
 ⑦犯罪により懲役一年以上の刑を受けている者
 ⑧失踪の宣告がされた者
5.7.民選議院は、日本帝国の財政に関する法政策案を作る特権を持つ。
5.8.民選議院は、過去の政策について検査しその悪影響を修正する権限を持つ。
5.9.民選議院は、行政官が出した法政策案を討論する権限を持つ。帝の提案を修正する権限を持つ。
5.10.民選議院は、必要な調査のために行政官や人民を呼び出す権限を持つ。
5.11.民選議院は、政策上の違反があると認めた行政官について、元老議院に訴えて処分させる特権を持つ。
5.12.民選議院は、代議士の身分について、次のことを判定する権限を持つ。
 ①代議士が民選議院の命令・規則・特権に違反するか
 ②代議士の選挙に関する訴え
5.13.民選議院の議長・副議長は、代議士の中から選出し帝の承認を得て決定する。
5.14.代議士は、議会で行った討論・演説について裁判に訴えられることはない。
5.15.代議士は、議会の会期中とその前後二十日間は、民事訴訟を受けてもそれに答弁しなくてよい。ただし、民選議院が承認する場合は、答弁しなければならない。
5.16.代議士は、議会の会期中とその前後二十日間は、現行犯の場合を除き、民選議院の承認がなければ逮捕・拘束されることはない。現行犯の場合も、裁判所は代議士を逮捕・拘束したら直ちに民選議院に通知し、民選議院にその事件についての真相究明と処分をさせなければならない。
5.17.民選議院は、議会の会期中とその前後二十日間は代議士の犯罪による身柄の拘束を停止させる権限を持つ。
5.18.民選議院の議長は、議院の事務官を任命・免職する権限を持つ。
5.19.代議士は、改選前の最後の議会で決定された額の給与を得る。また、特別の議決によって議会出席にかかった旅費を得ることができる。


第三篇 立法権

第二章 元老議院

6.1.元老議院は、帝の特権によって任命された議官四十名で構成される。ただし、元老議官は民選議院の代議士を兼ねることはできない。
6.2.満三十五歳以上で、次のいずれかの条件を満たす者のみが、元老議官になる資格を持つ。
 ①民選議院の議長
 ②代議士に三回選ばれたことがある者
 ③執政官または大臣
 ④参議官
 ⑤三等官以上に任命された者
 ⑥日本国の皇族または華族
 ⑦軍の大将・中将・少将
 ⑧特命全権大使または公使
 ⑨大審院・上等裁判所の議長、裁判官、または大検事
 ⑩地方長官
 ⑪国のために功績を挙げた者または能力と道徳において公に信認を得た者
6.3.元老議官は、議員の中から帝の特命によって任命する。
6.4.元老議官は、本人が生きている限りその地位を持つ。
6.5.元老議官は、一年に三万円以内の給与を得る。
6.6.帝の男子または皇太子の男子で、満二十五歳となって文武の常識を備えた者は、元老議官を務めることができる。
6.7.税金をかけるための議案は、まず民選議院において審議し、民選議院が決議したら元老議院がそれを再度審議する。このとき元老議院は、民選議院で決議された議案を可決するか否決するしかなく、議案を修正することはできない。
6.8.元老議院の制度や権限に関する法律案は、まず元老議院で審議しなければならない。このとき民選議院は、民選議院で決議された議案を可決するか否決するしかなく、議案を修正することはできない。
6.9.元老議院は、立法権を司るほか、次の三つの権限を持つ。それぞれの規則や手続きについては、法律で別途定める。
 ①民選議院からの訴えに基づき、大臣や行政官による行政上の不正を審判する。
 ②帝の身体または権威に対する重犯罪や、国家の安寧に対する重犯罪を裁判する。
 ③元老議官について裁判する。
6.10.元老議官は、議会の会期中、現行犯の場合を除いては元老議院の承認なく逮捕・拘束・裁判されることはない。
6.11.いかなる場合であっても、元老議官を逮捕・裁判するときは、直ちにそのことを元老議院に通知し、元老議院は議院の権限による処分を行う。


第三章 国会の職権

7.1.国家永続のための秩序を定める憲法を決定・修正し、最重要な三大制度の存続の判断を司る。
7.2.国会は、帝と、立法権を持つ元老議院・民選議院によって成り立つ。
7.3.国会は全て公開で行い、市民の傍聴を許可する。ただし、国益のためまたは緊急事態のため秘密会議を行う必要があるときは、議員十人以上が求めることでそれぞれの議院の議長が傍聴を禁止することができる。
7.4.国会は日本国民全てを代理する者として、法律を制定する立法権を持つ。ただし法律には帝の認可が必要である。
7.5.国会は、政府がもし憲法、宗教、道徳、信教の自由、個人の自由、法の下の平等、財産の所有権、もしくは法の原則に違反し、または国の防衛を損なうようなことがあれば、それを見逃さず反論し、事態発生時にさかのぼってその政策を拒絶する権限を持つ。
7.6.民選議院または元老議院が却下した法律案は、同じ会期中に再度提出することはできない。
7.7.国会は、政府の権限を定める公法と、国民同士の関係について定める私法を整備しなければならない。すなわち、国家に不可欠な建国制度、一般の私法、民事訴訟法、海上法、鉱山法、山林法、刑法、税の徴収と国家財政の原則、兵役の義務に関する原則などについて定めるとともに、国家財政の予算表を決定する。
7.8.国会は、政府が税をかけること、国営インフラの利用料金とその用途を決めること、国家の信用力によって国債を発行することについて認める権限を持つ。
7.9.国会は、行政機関の全てについて、法律や規則に違反していないか、実行した措置が適切であるか監督する権限を持つ。
7.10.国会が法案を議論する際は、帝がそれを中止させたり禁じたりすることはできない。
7.11.国会は、民選議院・元老議院ともに規則を設けて各院を取り仕切る権限を持つ。
7.12.国会は、議決によって①憲法に不足する条文を補う権限、②憲法に違反する政府の行動を矯正する権限、③新たな法律の制定や憲法の変更について発議する権限 を持つ。
7.13.国会は、全国民のために法律の内容を説明しなければならない。
7.14.国会は、帝、皇太子、または摂政官に、憲法と法律を守ることを宣言させる。
7.15.国会は、憲法に定める場合には、摂政を選出し、その権限を指定し、未成年である帝の後見人を任命する。
7.16.国会は、民選議院により訴えを起こされて元老議院の裁判で有罪となった閣僚を罰する。
7.17.①国会は、②国債を発行して資金を集める権限、③国の領地を売却したり領域を変更したりする権限、④府県を新設したり分割・合併したりする権限、⑤その他の行政区画を決定する権限 を持つ。
7.18.国会は、国家財政の歳入・歳出を計算した予算表を検討し、同意すればその予算は実行が認められる。
7.19.国会は、国の緊急事態において、政府の求めに応じ議員にその事態に関する特別な権限を指定し与える。
7.20.国会は、帝が亡くなったときまたは帝の座が空位となったときは、これまでの政策を検査し政策上の欠点を改正する。
7.21.国会は、帝国の領土または港に外国の軍隊が進入することの可否を判断する。
7.22.国会は、毎年政府の提案により、平時と緊急時の軍隊の最大規模を定める。
7.23.国会は、発行した国債を償還するために適切な方法を議論し決定する。
7.24.国会は、帝国に法律を施行するために必要な行政規則を決定する。
7.25.国会は、政府の官職とその給与を設定・改定・廃止する。
7.26.国会は、①貨幣についての規則 および ②長さ・容積・重さなどの単位 を設定する。
7.27.国会は、外国との条約について議決する。
7.28.国会は、兵役の義務を実行させる方法・規則・期限に関すること(特に、毎年集める兵士の人数、軍馬の調達、兵士の食料、陣地の規則)を議決する。
7.29.国会は、①政府の年間収支、②予算表の規則、③毎年各種の税をかけること、④政府の決算表と会計管理手続きの検査、⑤新たに国債を発行すること、⑥すでに発行した政府公債の変更、⑦国有地の売却・貸与、⑧独占販売その他特権についての法律 といった全国共通の会計関係の事務を定める。
7.30.国会は、貨幣(硬貨・紙幣)の発行に関する事務の規則、税関・貿易・電線・駅・鉄道その他国内外を連結する方法を議決する。
7.31.国会は、①証券取引、②産業規格、③長さ・容積・重さの基準となる定規・枡・重りの製造、④署名と印章の保護 についての法律を定める。
7.32.国会は、①医薬の法律、②伝染病防護の法律 を定める。


第四章 国会の開閉

8.1.国会は、両議院ともに必ず帝の命令によって毎年同時に開会しなければならない。
8.2.帝は、国の安寧のために必要と判断する場合には、両議院の①議決を認めない、②議会を中止する、③議会が混乱する場合は解散を命じる 権限を持つ。
 ただし、解散を命じた場合は必ず四十日以内に新たな議員を選出し二か月以内に議会を再開しなければならない。
8.3.帝が亡くなって、国会を開会する時期になっても命令を出す者がいない場合は、命令がなくても議員が集合して国会を開くことができる。
8.4.国会の会期中に帝が亡くなった場合は、後を継いだ新たな帝が解散を命じるまでは解散せず通常の会議を続けることができる。
8.5.国会の会期が終わり、次の国会が開かれるまでの間に帝が亡くなった場合は、議員が集合して国会を開くことができる。もし後を継いだ新たな帝により解散を命じられなければ、通常の会議を続けることができる。
8.6.議員の選挙が終わった後、まだ国会が開かれない間に帝が亡くなり、国会の開会を命じる者がいない場合は、議員が集合して国会を開くことができる。もし後を継いだ新たな帝により解散を命じられなければ、通常の会議を続けることができる。
8.7.国会議員の任期が切れ、次の議員がまだ選挙されていないときに帝が亡くなった場合は、任期が切れた前の議員が集合して一期のみ国会を開くことができる。
8.8.各議院の会議は同時に行わなければならない。もしいずれか一方のみが会議を行った場合は、国会の権限を持たない。ただし、議員の裁判のために元老議院を開く場合は、法廷としての権限を持つので有効である。
8.9.各議院は、議員の出席が過半数とならなければ会議を開くことができない。


第五章 憲法の改正

9.1.国の憲法の改正は、特別会議において行わなければならない。
9.2.特別会議は、両議院の三分の二以上の議員の賛成で議決し、かつ帝の許可がなければ開くことができない。
9.3.特別会議を開くときは、民選議院は休会する。
9.4.特別会議は、元老議員と、憲法改正のために選挙された人民の代表の議員によって成り立つ。
9.5.憲法は、人民代表議員の三分の二以上、元老議員の三分の二以上の賛成で議決した上で、帝の許可がなければ改正することができない。
9.6.特別会議は、その回の議事が終われば解散する。
9.7.特別会議が解散するときは、その前に開かれた国会は通常の進行に戻る。
9.8.憲法を除く全ての法律は、両議院において出席議員の過半数の同意により議決する。


第四篇

第一章 行政権

10.1.帝は行政官を監督する。
10.2.太政大臣と各省の長官を、行政官とする。
10.3.行政官は内閣を結成し、政策を討議し、各人が省の長官(卿)となってその省の事務を司る。
10.4.政府が出す政令や規則には、太政大臣と、該当分野の省の長官が署名する。
10.5.太政大臣は、大蔵卿を兼任しなければならない。
10.6.太政大臣は、帝に伝達した上で大蔵卿以外の省の長官を任命・免職する権限を持つ。
10.7.各省の長官の序列は次のとおり。
 ①大蔵卿、②内務卿、③外務卿、④司法卿、⑤陸軍卿、⑥海軍卿、
 ⑦工部卿、⑧宮内卿、⑨開拓卿、⑩教部卿、⑪文部卿、⑫農商務卿
10.8.行政官は、帝の命令に忠実に政務を実行する。
10.9.行政官は、担当する政務について議院に対し責任を負う。もしその政務について議院の信頼を失ったときは、行政官を辞職しなければならない。
10.10.行政官は、法案を作成し議院に提出することができる。
10.11.行政官は、国会議員を兼任することができる。
10.12.行政官は、毎年国家予算に関する議案を作成し議院に提案しなければならない。
10.13.行政官は、毎年国家の決算書を作成し議院に報告しなければならない。


第五篇

第一章 司法権

11.1.帝は司法権を総括する。
11.2.司法権は独立して偏らず、法典に定める機会に、司法の規定に従って、民事・刑事事件を審理する裁判官・判事・陪審員が実行する。
11.3.①大審院(最高裁判所)、②上等裁判所、③下等裁判所 を設ける。
11.4.①民法、②商法、③刑法、④訴訟法、⑤治罪法、⑥山林法、⑦司法官(裁判官)の構成 は、全国同等とする。
11.5.上等裁判所・下等裁判所の①数、②種類、③各裁判所の構成と権限・任務、④その権限・任務を実行する方法、⑤裁判官に付与される権限 などは、法律で定める。
11.6.裁判所は、上等・下等いずれでも廃止・改組することはできない。その体系は、法律によらなければ変更してはならない。
11.7.裁判官は全て帝が任命する。判事は終身職として任命される。陪審官は訴訟事件の判決を下す。裁判官は法律を解釈・適用する。諸々の裁判は、裁判所長の名で実行・判決する。
11.8.郡裁判所以外は、帝の任命した裁判官で三年間在職した者は、法律に定める場合を除いて転任・降任させることができない。
11.9.裁判官は全て、法律に違反することがあれば各自の責任となる。
11.10.裁判官は全て、自らが犯罪の裁判を受ける場合を除いて、有期・無期を問わずその職を奪われることはない。また、①司法官(裁判所議長または上等裁判所)の決定によりまたは②十分な理由に基づく帝の命令で、罪状ある裁判官をその所属する裁判所に訴える場合を除いて、裁判官の職を停止することはできない。
11.11.軍事裁判・護衛兵の裁判は、法律で定める。
11.12.税に関する訴訟と法令違反の裁判も、同様に法律で定める。
11.13.法律に定める場合を除いて、審理・裁判を行うために例外的・臨時的な司法機関を設けることはできない。いかなる場合であっても臨時・特別の裁判所を開き、臨時・特別の検察役を仕立て、裁判官を任命して罪を裁くことをさせてはならない。
11.14.現行犯を除き、該当する事件を取り扱う司法機関が発行した命令書によらなければ、人を逮捕することはできない。もし職権乱用で逮捕することがあれば、逮捕を命じた裁判官とそれを請求した者を法律に定める刑に処さなければならない。
11.15.罰金または禁固の刑に問われる犯罪者は、判決までの間その身柄を拘束できない。
11.16.裁判官は、管轄内の訴訟を把握・判断しないままに他の裁判所に移すことはできない。このため、管轄を超える特別の裁判所やそのための専任職員を設けることはできない。
11.17.何人も、自らの意思に反して、法律で定める正当な裁判官・判事から隔てられることはない。このため、正当な裁判所のほかに臨時裁判所を設けることはできない。
11.18.民事裁判・刑事裁判において、法律を適用する権限は上等・下等裁判所に属する。ただし、上等・下等裁判所は①判決を下すことと②その判決が実行されるのを監視すること 以外の業務を行うことはできない。
11.19.刑事裁判においては、証人を呼んで質疑し、その他全て罪となる点が明らかにされた後に、訴訟手続きが進行する。
11.20.行政権と司法権との間に生じうる権限争いの裁判については、法律で規定する。
11.21.司法権は、法律に定める特例を除き、参政権に関する訴訟を審理する。
11.22.民事・刑事いずれでも、裁判所の法廷は法律に定める規定に従い、必ず公開しなければならない。ただし、国家の安寧や風紀に影響する場合は法律の定めにより例外とする。
11.23.裁判は全て、法廷を開いて理由の説明とともに判決を言い渡さなければならない。刑事裁判は、判決の根拠とする法律の条項を明示しなければならない。
11.24.政治犯に対し死刑を宣告してはならない。政治犯の罪の事実は、陪審官が判定しなければならない。
11.25.著述・出版の犯罪の重さは、法律に定める特例を除き陪審官が判定する。
11.26.法律で定める重罪については、陪審官が罪の事実と重さを判定する。
11.27.法律に定める場合を除き、何人も逮捕の理由を明示した判事の命令によらなければ逮捕してはならない。
11.28.判事の命令の規則と、犯罪者の訴追に従事する期限は、法律で定める。
11.29.何人も、法律で職務に付与された権限によって、かつ法律で指定された規定に従って行う場合でなければ、家主の意思に反して家屋に侵入することはできない。
11.30.いかなる罪があっても、犯罪者の財産を没収してはならない。
11.31.信書便を取り扱う機関に託された信書の秘密は、法律で定める場合に判事から特殊な許可があるときを除き、絶対に侵害してはならない。
11.32.公益のために財産の没収を要する場合は、事前に法律で公布しなければならない。
11.33.①要塞の建設、②堤防の構築・補修、③伝染病 その他緊急事態において前条の公布が無くても没収できる場合は、法律で指定する。
11.34.戦時・火災・水害に際し、即時に財産没収が必要な場合は、その持ち主は法律による公布と没収の事前補償金を要求することができない。ただし、没収の補償を請求する権利は損なわれない。







  


Posted by 山本泰弘 at 00:00Comments(0)【現代語訳】

2016年02月23日

1881 【現代語訳】植木枝盛「東洋大日本国国憲按」

植木枝盛「東洋大日本国国憲按」(1881(明治14)年)
現代語訳:山本泰弘
底本:『植木枝盛集〈第一巻〉』、岩波書店、1990年。


【現代語訳(目次省略)】

第一編 国家の大原則および権利

第一章 国家の大原則

第一条 日本国は、日本国憲法に従って国を築き、保つものとする。
第二条 日本国には、一つの立法院(法律を定める国会)、一つの行政府(政策を実行する政府)、一つの司法庁(法をつかさどる裁判所)を置く。憲法はその規則を設ける。
第二章 国家の権限
第三条 日本の国家は、国家ならびに政府を成り立たせるために必要な物事を手配することができる。
第四条 日本の国家は、外国に対して外交上の付き合いをし、条約を結ぶことができる。
第五条 日本の国家は、日本人ひとりひとりの自由の権利を損なう規則を作って実施することはできない。
第六条 日本の国家は、日本国民ひとりひとりの私的なことに干渉する行いをすることはできない。


第二編 連邦国家・日本の大原則および権限、ならびに各州についての法

第一章 連邦の大原則

第七条 次に挙げる州を連合して、日本連邦となす。
 日本武蔵州、山城州、大和州、和泉州、摂津州、伊賀州、伊勢州、志摩州、尾張州、三河州、遠江州、駿河州、甲斐州、伊豆州、相模州、安房州、上総州、下総州、常陸州、近江州、美濃州、飛騨州、信濃州、上野州、下野州、岩代州、磐城州、陸前州、陸中州、陸奥州、羽前州、羽後州、若狭州、越前州、加賀州、能登州、越後州、越中州、佐渡州、丹後州、但馬州、因幡州、伯耆州、出雲州、石見州、隠岐州、播磨州、美作州、備中州、安芸州、周防州、長門州、紀伊州、淡路州、阿波州、讃岐州、伊予州、土佐州、筑前州、筑後州、豊前州、豊後州、肥前州、肥後州、日向州、大隅州、薩摩州、壱岐州、対馬州、琉球州
第八条 日本連邦政府を置き、州の単位を超えた日本全体の政治をつかさどる。
第九条 日本連邦は、各州に対し原則としてその州の自由独立を保護すべきものとする。
第十条 日本国内においてまだ州として独立していない所は、連邦政府が管理する。
第十一条 日本連邦は、各州に対し外国からの侵攻を防御する責務がある。

第二章 連邦の権限ならびに各州と関係する法

第十二条 日本連邦は、日本各州の互いの関係について規則を設けることができる。
第十三条 日本連邦は、それぞれの州の内部の事柄に干渉することはできない。その州内の郡や町村などの制度にも干渉することはできない。
第十四条 日本連邦は、日本各州の土地を奪うことはできない。その州自体が賛成を示す場合でなければ、州を廃止することはできない。
第十五条 憲法を改めない限り、日本の州を合併したり、分割したり、州の境界を変えたりすることはできない。
第十六条 日本国内の地域において新たに州をつくるに当たって、その地域が連邦政府と一体化しようとする場合は、連邦はそれを妨げることはできない。
第十七条 外国と盟約を結ぶ権限、国家として諸外国と外交を行う権限は、連邦にある。
第十八条 連邦において用いる単位の基準を制定する権限は、連邦にある。
第十九条 通貨を造る権限は、連邦にある。
第二十条 関税を定める権限は、連邦にある。
第二十一条 宣戦、講和の権限は、連邦にある。
第二十二条 日本連邦は、連邦の管理する場所に灯船(海上で灯台の役割をする船)・灯台・浮標(海上で道しるべとなる浮き。ブイ)を設けることができる。
第二十三条 日本連邦は、駅逓(郵便インフラ)を管理することができる。
第二十四条 日本連邦は、特に連邦に関する事柄のために法律や規則を定めることができる。
第二十五条 日本連邦は、外国貨幣および単位基準で連邦内に通用するものについて、その価値や位置付けを規定することができる。
第二十六条 日本連邦に、常備軍を設置することができる。
第二十七条 日本国内の州と州の間に起こった争いや訴えは、連邦が審判する。
第二十八条 日本の各州と外国の使節との間で公務上のやり取りや行き来があるときは、連邦の行政府を通して行うものとする。


第三編 各州の権限ならびに各州と連邦との関係についての法

第二十九条 日本各州は日本連邦の大原則に背くことを除き、それぞれ独立して自由なものとする。どのような政治体制を行うとしても、連邦がそれに干渉することはない。
第三十条 日本の各州は外国に対し国家の権利や国土に関する条約を結ぶことはできない。
第三十一条 日本各州は各国に対し、連邦や他の州の権利に関わりのないことに限り、経済や警察の分野の件について取り決めを結んだり法や規則をつくったりできる。
第三十二条 日本各州は、現実に賊徒に襲われ急な危険に迫られた場合でなければ戦闘を行うことはできない。
第三十三条 日本各州は、互いに戦闘することはできない。争い事があれば、連邦政府にその判定を委ねる。
第三十四条 日本各州は、現実に強敵に襲われたり大乱が発生したりなどという急な危険の際には、連邦に通報して救援を求めることまたは他の州に対して応援を要請することができる。各州は、他州からこのように応援を要請されたとき、それが真に急な危険からのものであるとわかるときは救援を送ることができる。それにかかった費用は連邦が負担する。
第三十五条 日本各州は常備兵を持つことができる。
第三十六条 日本各州は護郷兵(州の防衛のための兵力)を持つことができる。
第三十七条 日本各州は、連邦の許可がないのに二州以上で盟約を結ぶことはできない。
第三十八条 日本各州は、関係する二州以上で協議することにより、その境界を改めることまたは州を合併することができる。これを行うときは必ず連邦に通告しなければならない。
第三十九条 (空白)


第四編 日本国民および日本人民の自由の権利

第四十条 日本の政治社会にある者を、日本国人民とする。
第四十一条 日本の人民は、自らの意思や承諾によって離脱する場合でなければ、日本人であることを損なわれない。
第四十二条 日本の人民は法律上平等とする。
第四十三条 日本の人民は、法律によってでなければ、自由の権利を損なわれない。
第四十四条 日本の人民は、満足な生命を得、満足な手足や身体や容姿を得、健康を保ち、名誉を保ち、世の中の物を使用する権利を持つ。
第四十五条 日本の人民はどのような罪を犯したとしても生命を奪われることはない。
第四十六条 日本の人民は、法律によるものでなければどのような刑罰も与えられてはならない。また、法律によらずに罪を責められたり、逮捕されたり、拘留されたり、監禁されたり、取り調べられたりすることはない。
第四十七条 日本人民は、ある一つの罪のために繰り返して身体に刑罰を加えられることはない。
第四十八条 日本人民は、拷問を加えられることはない。
第四十九条 日本人民には、思想の自由がある。
第五十条 日本人民は、どのような宗教を信じるのも自由である。
第五十一条 日本人民には、言葉を話す自由権がある。
第五十二条 日本人民には、議論を行う自由権がある。
第五十三条 日本人民には、言葉を筆記し出版して公開する権利がある。
第五十四条 日本人民には、自由に集会を行う権利がある。
第五十五条 日本人民には、自由に団体を組む権利がある。
第五十六条 日本人民には、自由に歩行する権利がある。
第五十七条 日本人民には、住居を害されない権利がある。
第五十八条 日本人民は、どこに居住するのも自由とする。また、どこに旅行するのも自由とする。
第五十九条 日本人民は、どのようなことを教え、どのようなことを学ぶのも自由とする。
第六十条 日本人民は、どのような産業を営むのも自由とする。
第六十一条 日本人民は、法律に定められた手続きによらずに屋内を探索され見調べられることはない。
第六十二条 日本人民は、通信の秘密を損なわれてはいけない。
第六十三条 日本人民は、日本国を去ることや日本国籍を脱することを自由とする。
第六十四条 日本人民は、すべて法の許さない物事に抵抗することができる。
第六十五条 日本人民には、財産を自由に扱う権利がある。
第六十六条 日本人民は、どのような罪を犯したとしても私有のものを没収されることはない。
第六十七条 日本人民は、所有するものを正当な補償がないのに公共のものとされることはない。
第六十八条 日本人民は、それぞれ自身の名で政府に書状を出すことができる。各自は自身のために請願をする権利がある。公立の会社においては、会社の名で書状を出すことかできる。
第六十九条 日本人民には、行政官に任用される権利がある。
第七十条 政府がこの憲法に背くときは、日本人民は政府に従わなくてよい。
第七十一条 政府や役人が抑圧的な行為をするときは、日本人民はそれらを排除することができる。政府が威力をもって勝手気ままに横暴で残虐な行為をあくまでもなすときは、日本人民は武器をもって政府に対抗することができる。
第七十二条 政府がわがままにこの憲法に背き、勝手に人民の自由の権利を害し、日本国の趣旨を裏切るときは、日本国民はその政府を打倒して新たな政府を設けることができる。
第七十三条 日本人民は、兵士の宿泊を拒絶することができる。
第七十四条 日本人民は、法廷に呼ばれ証言を求められる際、どのような理由により訴えが起こされたかを聞くことができる。法廷で自分を訴えた当人と対決することができる。自分を助ける証人や弁護者を得る権利がある。


第五編 皇帝および皇族、摂政

第一章 皇帝の特権

第七十五条 皇帝は、国政の責任を負わない。
第七十六条 皇帝は、刑を受けることはない。
第七十七条 皇帝は、身体にかかる税を負担しない。

第二章 皇帝の権限

第七十八条 皇帝は、軍を支配する権限を持つ。戦争を始めること、講和することの決定権を持つ。他国の独立を認めるか認めないかを決定する。ただし戦争開始や講和を決定したときは直ちに立法院に報告しなければならない。
第七十九条 皇帝は戦争のないとき、立法院の議論を経ないで兵士を徴収または募集することができる。
第八十条 皇帝は外交事務の総裁である。外交官を任命することができる。外国との交際の儀礼を行うことができる。
第八十一条 皇帝は、功績を称える位や勲章を与えることができる。
第八十二条 皇帝は、立法院の決議がなければ、通貨を創造したり改造したりできない。
第八十三条 皇帝は国会の承諾を経て連邦の受刑者を刑から解放したり刑を軽くしたりすることができる。連邦の規定で行われた裁判を他の裁判所に移してやり直させることができる。司法庁が司法権を行使するのを妨げることができない。連邦閣僚の職務上の罪に関わった者には、連邦立法院に反して恩赦を与えたり刑の軽減をしたりすることができない。
第八十四条 皇帝は、立法議会を延長することができる。延長できる期間は、立法議院の承諾がなければ三十日を越えることができない。
第八十五条 皇帝は、軍備を調えることができる。
第八十六条 皇帝は、国政を成り立たせるために必要な命令を出すことができる。
第八十七条 皇帝は、人民の権利に関わること、国家の金銭を費やして行うこと、国家の土地に変更を加えることについては、自身のみの決定で行うことはできない。必ず連邦立法院の議決を経なければならない。立法院の議決を経ないものは、その効力を持たない。
第八十八条 皇帝は、連邦行政府に出向いて政務を執り行う。
第八十九条 皇帝は連邦行政府の長である。常に連邦行政府の全権を持つ。特別に定めるものの他、連邦の行政官・行政職員を任命することができる。
第九十条 皇帝は、連邦司法庁の長である。その名をもって法の判断を下し、また法務官を任命する。
第九十一条 皇帝は、現行の法律を廃止したりすでに定まった法律を受け入れず放置したりすることはできない。
第九十二条 皇帝は、法律によらずに税を取ることはできない。
第九十三条 皇帝は、法律によらずに立法院の議論を拒むことはできない。
第九十四条 皇帝は立法議会と意見が一致しない場合、一度その議会を解散させることができる。こうして解散したときは解散したことを必ず三日以内に各選挙区に通達し、かつ人民に改めて議員を選ばせ、必ず六十日以内に議会を再開しなければならない。一度解散した後再開した議会は、同じ案件について再び解散することはできない。
第九十五条 立法院が議決したことを皇帝が実施しがたいとするときは、議会にこれを再び議論させることができる。このようにするときは、皇帝はその理由を詳しく述べ記して伝えなければならない。

第三章 皇帝、および帝位の継承

第九十六条 日本国皇帝の位は今上(現在の)天皇睦仁陛下が有する。
第九十七条 今上皇帝陛下が退位する際は、陛下の正統の子孫が位を受け継ぐ。もし子孫がないときは、次の順序に従って近い親戚が受け継ぐ。
 今上皇帝の位は、
 第一、嫡出の皇子およびその直系に受け継がれる。
 第二、嫡出の皇子およびその直系がいないときは、嫡庶子およびその直系に受け継がれる。
 第三、嫡庶子およびその直系がいないときは、庶皇子およびその直系に受け継がれる。
 第四、以上の血統の者がいないときは、嫡出の皇女およびその直系に受け継がれる。
 第五、以上の血統の者がいないときは、庶皇女に受け継がれる。
 第六、もしも以上の血統の者がいなければ、皇帝の兄弟姉妹およびその直系に受け継がれる。
 第七、もしも以上の血統に加え皇帝の伯叔父・伯叔母およびその直系までもいなければ、立法院の議決によって皇族の中より後継者を定める。
第九十八条 帝位継承の順序は、男を女より優先し、年長者を年少者より優先し、嫡出子を庶子より優先する。
第九十九条 特別な非常事態があって帝位継承の順序を変えようとすることがあれば、皇帝と立法院との協議によって実行するものとする。

第四章 皇帝の即位

第百条 皇帝の即位は、必ず立法議員が集合した場において行う。

第五章 皇帝の婚姻

第百一条 皇帝の婚姻は立法院の議決を必要とする。
第百二条 女性皇帝の夫は皇帝の権限に干渉することができない。

第六章 皇帝の収入

第百三条 皇帝は毎年国から(空白)万円の俸給を受ける。

第七章 皇帝の年齢

第百四条 皇帝の年齢が十八歳になるまでの間は、未成年とする。十八歳になれば成年とする。

第八章 摂政

第百五条 皇帝が未成年の間は、摂政を置く。
第百六条 皇帝の身に長く事故があって自ら政務を行うことができないときは、摂政を置く。
第百七条 皇帝の身に自己があって摂政を置く際に、皇太子が成年になっているときは、皇太子を摂政とする。
第百八条 摂政は皇帝の名において権限を行使する。
第百九条 摂政の職務の決まりは立法院が定める。
第百十条 皇帝または首相が摂政となるべき者を指名し、立法院が決定する。
第百十一条 皇帝が、皇太子が未成年であるうちに位を譲ろうとする場合、あらかじめ摂政となるべき者を指名した上で立法院の議決を求めることができる。

第九章 皇族

第百十二条 皇太子は身体に関する負担を免れる。
第百十三条 皇太子は毎年国から俸給を受ける。これについては法律で定める。

第六編 立法権に関する諸規則

第一章 立法権に関する大原則

第百十四条 日本連邦に関する立法権は、日本連邦人民全体が有する。
第百十五条 日本連邦人民はみな、連邦の議会制民主主義に携わることができる。
第百十六条 日本皇帝は、日本連邦の立法権に携わることができる。
第百十七条 日本連邦の法律制度は連邦立法院において定める。
第百十八条 連邦立法院は全国にただ一つ置く。
第百十九条 連邦の立法権は、間接制民主主義によって行使する。

第二章 立法院の権限

第百二十条 連邦立法院は、連邦に関する租税を定める権限を持つ。
第百二十一条 連邦立法院は、連邦の軍事規律を定めることができる。
第百二十二条 連邦立法院は、連邦裁判所の訴訟に関する法を定めることができる。
第百二十三条 連邦立法院は、連邦に関する兵制(兵士雇用についての制度)を定めることができる。
第百二十四条 連邦立法院は、連邦の名において国債を発行して金銭を借り、およびその債務を返済する法を定めることができる。
第百二十五条 連邦立法院は、通貨に関する法律を定めることができる。連邦に対する国事犯罪についての法律を定めることができる。
第百二十六条 連邦立法院は、郵便制度を定めることができる。
第百二十七条 連邦立法院は、連邦の通貨を増減したり改造したりする決定ができる。
第百二十八条 連邦立法院は、連邦の共有物を設置することができる。
第百二十九条 連邦立法院は、連邦政府が保証する銀行(政府銀行)の規則を定めることができる。
第百三十条 連邦立法院は、特に必要な調査に関し、連邦の公務員や連邦人民を議会に呼び出す権限がある。また、連邦人民を呼び出して事情を聞き出すことができる。
第百三十一条 連邦立法院は、憲法の許す諸権利を実現するために諸々の規則を定めることができる。
第百三十二条 連邦立法院は、外国人並びに国外の者に関する規則を定めることができる。
第百三十三条 連邦立法院は、連邦行政府が執行する職務に関する犯罪並びに国事犯罪を審議・裁判し、最もふさわしい裁判所に求刑する権限を持つ。
第百三十四条 連邦立法院は、連邦立法院に委ねられた権限の範囲を監査する権限がある。
第百三十五条 連邦立法院は、議員の中でその職に関する命令・規則に違反する者を処分することができる。
第百三十六条 連邦立法院は、過去にさかのぼる法律を定めることができない。
第百三十七条 連邦立法院は、外国と条約を結んだり連盟を組んだりする決定を行う権限がある。ただし、国権の独立を失う契約を結ぶことはできない。
第百三十八条 連邦立法院は、行政部に対し取り調べをする権限を持つ。

第三章 立法議院の権力

第百三十九条 連邦立法議員は、その職を行うにつき発言した意見について、問いただされることはない。
第百四十条 連邦立法議員は、議会開会の間並びにその前後三十日間は、立法院の許可なしに身柄を捕らえられたり取り調べられたりすることはない。ただし、現行犯の場合はこの限りではない。

第四章 議員の選挙および被選挙の法

第百四十一条 連邦議員は、連邦人民が直接選挙する。
第百四十二条 連邦議員は、一州あたり七名と定める。
第百四十三条 現に租税を納めていない者、現に法律上の罪により刑に服している者、政府の公務員は議員を選挙することができない。
第百四十四条 現に法律上の罪により刑に服している者と政府の公務員は議員として選ばれることができない。
第百四十五条 日本各州は、いずれの州の人を議員に選び出すのも自由とする。

第五章 議員の任期

第百四十六条 連邦の立法議員は三年を一期とし、三年ごとに全員を選び直す。

第六章 議員の給与・旅費

第百四十七条 連邦の立法議員は毎年国より三千円の手当金を受ける。また、立法院の会議に出るごとに往復の旅費を受ける。

第七章 議員の制限

第百四十八条 連邦の立法議員は、連邦の行政官を兼ねることができない。

第八章 立法会議

第百四十九条 連邦の立法会議は毎年一回開催する。基本的には十月の第一月曜日に開会する。
第百五十条 議事の多少によって、皇帝は立法会議の期日を延長したり短縮したりできる。しかし議員過半数の同意があるときは、皇帝の命令があるとしても議会が延長・短縮を定める。

第九章 立法会議の開会・閉会、参集・解散

第百五十一条 非常事態があって会議を必要とするとき、皇帝は臨時会を開くことができる。
第百五十二条 連邦会議の開会・閉会は皇帝がつかさどる。
第百五十三条 毎年の常会は、皇帝の命令がなくとも連邦議員が自ら集合して議事を行うことができる。
第百五十四条 皇帝が死去したとき、連邦議会は臨時会を開く。
第百五十五条 議員の任期がすでに尽きているものの、いまだ交代するべき次の議員の選挙が行われていない間に皇帝が亡くなったときは、任期が尽きた前職の議員が集合して、新たな議員が選出されるまで会議を行うことができる。
第百五十六条 立法会議が皇帝によって解散させられた後、皇帝が国法通りに再開しないときは、解散された議会は自ら復活することができる。

第十章 会議規則

第百五十七条 連邦立法議案は、立法院も皇帝も、ともに提出することができる。
第百五十八条 連邦立法議会の議長は、立法院において議員の中から公に選出する。
第百五十九条 会議は一般に、議員総数の過半数の出席ならば開くことができる。ただし、同一の案件について再度以上集会を開くときは、過半数の出席がなくとも議事を行うことができる。
第百六十条 特別に定めた規則のない案件の議事はすべて、出席議員の過半数の表決によって決定する。表決が同数となった場合は、議長の裁量によって決定する。
第百六十一条 連邦の立法会議は公に傍聴を許す。特異な時機においては秘密にすることができる。

第十一章 立法院の決議を国法とする際に皇帝と関係する規則

第百六十二条 連邦立法院において決定した成案は、皇帝に通知して承認を得る必要がある。
第百六十三条 皇帝は、立法院の成案を受け取ったら、必ず三日以内に応答しなければならない。もし熟考の必要があるときは、その旨を申請した上で二十日以内に可否を示す。
第百六十四条 連邦立法院の決定で、皇帝が同意しないものがあれば、その案件を立法院に再度議論させる。立法院が再議するときは、議員総数の過半数の同意があれば再び皇帝に報告した上で成案は必ず実行するものとする。


第七編 行政権に関する諸規則

第一章 行政権に関する大原則

第百六十五条 日本連邦の行政権は日本皇帝が持つ。
第百六十六条 日本連邦の行政府は日本皇帝が統一して管轄する。
第百六十七条 日本連邦の行政権は連邦行政府が実施する。
第百六十八条 皇帝が行政権を行使する上では、国家に唯一の首相を置き、また諸行政分野ごとに各省庁を設け、それぞれの主務長官を任命する。
第百六十九条 皇帝が出す諸々の布告には、首相が署名した上で、当該案件の主任長官が副署して発出する。閣僚の副署がないものは無効である。
第百七十条 皇帝が発する諸々の布告については、首相および当該案件の主任長官が責任を負う。ただし閣僚の副署がないものについては、その閣僚は責任を負わない。

第二章 行政官

第百七十一条 連邦行政官は皇帝の命令に従って職務を行う。
第百七十二条 首相は皇帝に通知した上で諸省庁の長官を任命することができる。
第百七十三条 連邦閣僚は、議案を起草して立法議会に提出することができる。また議会に出席することができるが、表決の数に入ることはできない。
第百七十四条 連邦行政官は、連邦立法議員を兼ねることができない。
第百七十五条 連邦行政官は、その執行する政務について皇帝並びに国民に対する責任を負う。一人の行政官が単独で行ったことはその者が責任を負う。複数の行政官が分担して行ったことはその全員が連帯して責任を負う。
第百七十六条 連邦行政官たる者が、職務上の犯罪や過失について弾劾または責任追及をされている間は、その職を辞めることができない。

第三章 行政府

第百七十七条 連邦行政府は、毎年国費に関する議案を起草し立法議会に提出する。
第百七十八条 連邦行政府は、毎年国費決算書を作成し立法議院に報告する。

第四章 統計局

第百七十九条 国家の歳出と歳入の予算表・精算表は、行政府統計局において作成する。
第百八十条 統計局の長官は、立法院が選任する。
第百八十一条 統計局は、国家の出納会計を検査・監察することができる。
第百八十二条 統計局は、行政各部より会計に関する一切の書類を収集することができる。


第八編 司法権に関する諸規則

第一章 司法権に関する大原則

第百八十三条 連邦司法権は、法律に定めた裁判所において実施する。
第百八十四条 特別の定めのない民事・刑事の裁判訴訟は、司法権の管理下とする。
第百八十五条 非常裁判所を設け、非常裁判官を選任して臨時に司法権を行使することはできない。
第百八十六条 軍の規則を犯した軍人は、軍の裁判所において軍の規則により裁かれる。

第二章 裁判官

第百八十七条 連邦裁判官はすべて立法議院において任命・罷免する。
第百八十八条 裁判官は給与を与えられる職業・任務を兼ねることができない。立法議員を兼ねることもできない。

第三章 裁判所

第百八十九条 連邦裁判所は、憲法に従う外はいかなる制約も受けず、他の機関の管轄を受けない。

第四章 裁判

第百九十条 裁判はすべて、その裁判を開く理由と目的を明らかにする。
第百九十一条 民事裁判では代理人による代言を許す。
第百九十二条 刑事裁判は陪審制を設け、弁護人を付けることを許す。
第百九十三条 裁判は一般市民の傍聴を許して公に行う。風俗を害する事件に限って傍聴を禁じることができる。

第五章 高等裁判所

第百九十四条 諸裁判所の外、日本全国に唯一の高等裁判所を置く。
第百九十五条 高等裁判所は、閣僚の職務にかかる事案を審判する。
第百九十六条 高等裁判所は、皇族に対する犯罪や連邦に対する犯罪のような、通常犯罪とは異なる非常の大犯罪を審判する。


第九編 土地

第百九十七条 国家の土地はすべて、国家の共有とする。
第百九十八条 国家の土地は、立法院の議決によらなければ何一つ動かすことはできない。
第百九十九条 国家の土地は、立法院の議決によらなければ、他国に売ったり、譲ったり、交換したり、抵当に入れたりすることができない。

第十編 租税

第二百条 連邦の租税は各州から徴収する。その額は法律で定める。
第二百一条 連邦の租税は、連邦立法院の議決を経なければ一切徴収することができない。
第二百二条 連邦の租税は、毎年一回立法院において決定する。

第十一編 国会

第二百三条 連邦の金銭は、憲法によらなければ使用したり消費したりすることができない。

第十二編 財政

第二百四条 憲法によらなければ、政府は国債を発行することができない。
第二百五条 憲法によらなければ、政府は諸債務の保証をすることができない。

第十三編 会計

第二百六条 毎年のすべての出納は、予算表並びに精算表に示して必ず国民に公開する。

第十四編 甲兵

第二百七条 国軍の兵は憲法を護持するものとする。
第二百八条 国家の軍隊の指揮権は皇帝が持つ。
第二百九条 国軍の大元帥は皇帝と定める。
第二百十条 国軍の将校は、皇帝が選任する。
第二百十一条 常備兵は、法律・規則に従って皇帝が民衆から募集し、それに応募した者を採用する。
第二百十二条 皇帝は、常備軍を監督する。非常事態が起こった際は、皇帝は常備軍の外に兵士を募集して志願した者を採用することができる。
第二百十三条 他国の兵は、立法院の議決を経なければ雇用することができない。


第十五編 外国人の帰化

第二百十四条 日本国は、外国人の帰化を許す。


第十六編 特法

第二百十五条 国内外に戦乱がある時に限り、その地においては一時、人身の自由、住居の自由、言論・出版の自由、集会・結社の自由などの権利を制限し、取締りの規則を設けることがあり得る。戦乱の事態が終われば必ず直ちにその規則を廃止しなければならない。
第二百十六条 戦乱のためにやむを得ないことがあれば、相当の補償と引き替えに一般市民の私有地・私有物を使用したり、破壊したり、消費したりすることがあり得る。最も緊急の時で、あらかじめ本人に照会し事前に補償をする暇がないときは、事後に補償をすることができる。
第二百十七条 戦乱がある場合には、その間に限りやむを得ないことについて法律を設定することがあり得る。


第十七編 鉄道・電信・陸路・水利

第二百十八条 新たに鉄道を造ったり、電気・通信網を敷いたり、陸路を開拓したり、水路を通したりなどのことについては、立法院の通常会議において議論することができない。立法議員による特別の会議によってこれらについて決定することができる。議員過半数の同意がある案件は実行することができる。


第十八編 憲法改正

第二百十九条 日本国憲法を添削・改正するときは、立法会議における決定を必要とする。
第二百二十条 憲法改正の議事は、その日の出席議員数にかかわらず、議員総数の過半数の同意がなければ決定することができない。


附則

第二百二十一条 日本国憲法施行の日より、憲法に抵触する一切の法律・条例・布告などはすべて廃止する。  


Posted by 山本泰弘 at 04:22Comments(0)【現代語訳】

2016年02月21日

1945 【現代語訳】憲法研究会「憲法草案要綱」

憲法草案要綱 憲法研究會案
高野岩三郎、馬場恒吾、杉森孝次郎、森戸辰男、岩淵辰雄、室伏高信、鈴木安蔵
現代語訳:山本泰弘


根本原則(統治権)
1.1.日本国の統治権は日本国民が有する。
1.2.天皇は国政を自ら執り行わず、国政全ての最高責任者は内閣とする。
1.3.天皇は国民の委任により、専ら国家的儀礼を司る。
1.4.天皇が即位する際は、議会の承認を経ることとする。
1.5.摂政(天皇の代理または補佐役)を置くかどうかは議会が決める。

国民の権利や義務
2.1.国民は法律の前に平等であり、生まれや身分に基づくあらゆる差別は廃止する。
2.2.爵位(「公爵」や「伯爵」などの、貴族の身分)、勲章、その他の栄典は全て廃止する。
2.3.国民の言論・学術・芸術・宗教の自由を妨げるどのような法令も、発することはできない。
2.4.国民は、拷問を加えられることはない。
2.5.国民には、①国民請願、②国民発案、そして③国民投票の権利がある。
2.6.国民には、労働の義務がある。
2.7.国民には、労働し、その働きに対して報酬を受ける権利がある。
2.8.国民には、健康で文化的な生活を営む権利がある。
2.9.国民には、休息の権利がある。国家は、労働時間を一日8時間までとし、勤労者のために①有給休暇制度、②療養所、③社交や教養のためのインフラ を完備するべきである。
2.10.国民には、老いや病気、その他の事情によって働けなくなった場合に生活を保障してもらう権利がある。
2.11.男女は、社会的にも、個人間や家庭内でも、完全に平等な権利を持つ。
2.12.民族や人種による差別を禁じる。
2.13.国民には、①民主主義と平和思想に基づく人格の完成、②社会道徳の確立、③諸民族との共存共栄 に努める義務がある。

議会
3.1.議会は、次の機能を持つ。
 ①法律を作る権力を持つ。
 ②法律を議決する。
 ③国の予算と歳入および歳出を承認する。
 ④行政に関する規則を定める、その取り扱いを監督する。
 なお、日本が外国と結ぶ条約のうち、法律で定める内容に関するものは、議会の承認を得なければならない。
3.2.議会は、第一院と第二院の二院制をとる。
3.3.第一院の議員の選び方は次のとおり。
 ①全国を一つの選挙区とする。
 ②満二十歳以上の男女が立候補できる。
 ③満二十歳以上の男女が投票できる。
 ④一人一人平等な票を持ち、議員を直接選ぶ。投票の秘密は守られる。
 ⑤政党ごとの得票数に応じて当選議員の多い少ないが決まる、比例代表制をとる。
 なお、第一院の権限は第二院よりも優先する。
3.4.第二院の議員は、各種の職業のそれぞれの階層から、公の選挙で選ぶ。
3.5.法律案は、第一院において可決されれば、第二院において否決できない。
3.6.議会に休みは無い。もし議会が休会する場合は、常任委員会が代わりにその機能を果たす。
3.7.議会の会議は全て公開する。非公開の会議は行わない。
3.8.議会は、議長と書記官長を選出する。
3.9.議会は、憲法違反をはじめとする重大な過ちを追及するために、大臣や官僚を裁判に訴えることができる。その裁判を行うために、国事裁判所を設ける。
3.10.議会は、国民投票によって解散が決まったときは、すぐに解散しなければならない。
3.11.有権者の過半数が投票に参加する国民投票によるならば、議会の決議を無効にできる。

内閣
4.1.総理大臣は、第一院と第二院双方の推薦によって決める。各省庁の大臣やその他の国務大臣は、総理大臣が任命する。
4.2.内閣は、国際社会において日本国を代表する。
4.3.内閣は、議会に対し連帯責任を負う。つまり、内閣は議会の信任に基づいて成り立たなければならない。
4.4.内閣は、国民投票によって不信任と決まったときは、総辞職しなければならない。
4.5.内閣は、官僚を任命し、罷免する。
4.6.内閣は、国民の名において恩赦(特別に刑を軽くする)を行う。
4.7.内閣は、法律を執行するために命令を発する。

司法
5.1.司法権を司る裁判所は、裁判所構成法と陪審法に基づき、国民の名によって裁判を行う。
5.2.裁判官は独立であり、ただ法律のみに従う。
5.3.大審院(最高裁判所)は、最高の司法機関であり、全ての下級司法機関を監督する。
 大審院長は、公の選挙によって選び、国事裁判院長を兼ねる。
 大審院判事は、第二院の議長の推薦と第二院の承認を経て就任する。
5.4.行政裁判所長と検事総長は、公の選挙によって選ぶ。
5.5.検察官は、行政機関から独立である。
5.6.裁判で無罪の判決を受けた者に対しては、国家が十分な補償を行うこととする。

会計と財政
6.1.国の歳出と歳入は、毎年度詳細かつ明確に予算に表し、年度の開始前に法律として定める。
6.2.事業会計については、毎年事業計画書を提出し、議会の承認を得ることとする。
 事業会計についてのみ、特別会計を設けることができる。
6.3.税を課し、税率を変更することは、一年ごとに法律によって定めることとする。
6.4.国債やその他予算に定めたものを除き、国家財政の負担となる契約については一年ごとに議会の承認を得ることとする。
6.5.皇室費は、一年ごとに議会の承認を得ることとする。
6.6.予算案はまず第一院に提出するものとする。第一院で承認された項目および金額については、第二院が否決することはできない。
6.7.税は公正に課すものとする。消費にかかる税に偏重して国民に過剰な負担をかけることは禁じる。
6.8.歳入および歳出の決算は速やかに会計検査院に提出して検査を受けた後、次の年度に議会に提出し、それが承認されたら政府の責任は果たされたとする。
 会計検査院の組織と権限は、法律によって定める。会計検査院長は、公の選挙で選ぶ。

経済
7.1.経済活動は国民各自が人間に値すべき健全な生活を送れることを目的とし、正義・進歩・平等の原則に適合しなければならない。
 各人の私的所有権と経済的自由は、この限度内で保障される。
 所有権には、公共の利益に役立つべき義務が伴う。
7.2.土地の分配および利用は、全ての国民に健康な生活を保障できるようになされることとする。
 寄生的土地所有ならびに封建的小作料は、禁止する。
7.3.著作者・発明家・芸術家の権利は保護される。
7.4.労働者をはじめ、全ての勤労者は、労働条件改善のための結社と運動の自由が保障される。
 これを制限したり妨害したりする法令、契約、および処置は全て禁止する。

補則
8.1.憲法は、国会で議員の三分の二が出席し、出席議員の半数以上が同意して改正が決議されたとき、改正される。
 国民請願に基づき、憲法の改正を国民投票によって決める場合は、有権者の過半数の同意があれば憲法は改正される。
8.2.この憲法の規定ならびに精神に反する全ての法令および制度は、直ちに廃止する。
8.3.皇室典範は、議会の審議を経て定めなければならない。
8.4.この憲法が公布された後十年以内に、国民投票により新たな憲法を定めるものとする。  続きを読む


Posted by 山本泰弘 at 01:54Comments(0)【現代語訳】