2017年09月20日
2017-04-27 「語り継ぐ 明治の英雄譚」@山形新聞
語り継ぐ 明治の英雄譚
(2017年4月27日 山形新聞採用)
(2017年4月27日 山形新聞採用)
時は明治初年。天下を奪った薩摩・長州をはじめとする新政府軍は、降伏を表明した旧幕府軍を執拗に攻め立て、東日本各地が戦場となった。戊辰戦争である。
会津藩と並び最後まで新政府軍と戦ったのが、われらが庄内藩。その忠義に感銘を受けた薩摩の西郷隆盛が、敗者となった庄内藩に寛大な処分を下したという。
美談のように聞こえるが、これには後日談がある。保護された庄内藩の支配者層はそのまま県の役人となり、あろうことか新政府の基準よりも厳しく百姓から年貢を取り立てたのだ。この仕打ちへの怒りは庄内中に広がり、政治運動となる。
払いすぎた年貢を精算すれば「ワッパ(当時の弁当箱)いっぱいの銭が戻るはずだ」というのが、農民から商人、良心派の役人までもを一体にしたこの運動の合言葉だった。巧みなコミュニケーション戦術もさることながら、正義のためには処罰をも恐れぬ地元のリーダーらが繰り返し政府や司法に訴えたことで、ついには領民側が返金を勝ち取る。その名も「ワッパ騒動」だ。
私財を投げ打ってこの運動に尽くしたのが、酒田きっての知恵者、森藤右衛門(もり・とうえもん)。当時の書物に、なんと福澤諭吉や板垣退助と並ぶ偉人として描かれている。
権力者だけが歴史のヒーローではない。無名の民の中にこそ、自他の苦境を見過ごさず、おかしいことをおかしいと言う勇者がいる。美談と対になる泥臭い英雄譚を、語り継ぎ範としていきたい。
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