2017年09月09日

2015-12-25 「東根の『発展』に思う」@山形新聞

東根の「発展」に思う
東根市 山本泰弘 公務員
(2015年12月25日 山形新聞掲載)

 順風満帆のように思われる近年の東根市の発展。内外から評価の声が聞かれるが、その結果として「将来に残る情緒的な都市空間」を育めているだろうか。
 私は大学進学とともに地元を離れ、今年転職により帰郷したUターン者だ。毎年帰省するたびに、新築住宅が増えていく郷里の変化を目の当たりにし喜ばしく思っていた。が、それとともにそこかしこのさくらんぼ・りんごの畑や田んぼが潰され消えゆくことに、これでよいのだろうかという不安も胸をよぎる。

 まちづくり政策の専門家である足立基浩・和歌山大学教授は、地域の経済やコミュニティがしっかり残る英国のまちづくりと日本のそれとを比較して言う。英国は、地域の中心部に投資を積み重ねる政策がとられているのだと。その結果各地の小都市には伝統的な街並みの中に地元商店や全国チェーン店がおしゃれに共存する「歩いて巡れる商店街」が形成され、住民は日常的に回遊する。それだけの魅力と情緒が養われるのだ。
 他方日本の地方都市は、開発が郊外へ郊外へと薄く広がり、街の中心が定まらず衰退しやすい。中核が曖昧な都市は、ひとたび発展の勢いが陰るとボロボロと虫食い状に劣化していく。

 東根の発展は、すでに日本の多くの地域が踏んだ轍をたどってしまわないか。都市の規模の拡大に満足するのではなく、中心部に投資を集中させ、地域内外の人がそこに浸って東根を味わえる景観・雰囲気・情緒を備えた街路空間を形作ることが急務だ。




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