2010年05月01日

学士論文 第2章 第3節 第1項 社会的責任投資商品の販売

第2章 社会的責任投資の動向
第3節 民間金融機関
第1項 社会的責任投資商品の販売



 本節では個人投資家や預金者の視点に立脚し、主に日本において個人がアクセス可能な社会的責任投資の選択肢を挙げる。
 先に挙げた投資市場の主流を形成する機関投資家が受託者責任や運用成績を厳しく問われるのに対し、個人投資家・預金者は自己の資産運用について比較的自由度が高いと言える。現在は個人も利率を重視した資産運用を行うのが一般的だが、社会的責任投資の価値観が広まれば個人の投資においてもそれが主流となる可能性がある。


社会的責任投資商品の販売*

 民間の投資信託会社・証券会社は、個人投資家を対象に社会的責任投資としての金融商品を販売している。多くの場合投資信託(ミューチャル・ファンド)の形態をとり、金融機関側が調査会社などから得た情報をもとに社会的責任行動の充実度の高い事業者を選定して投資先群を構成する。投資先の選定と運用を行うのは金融機関(投資信託販売会社)であり、運用損益は個別の商品を購入した投資家に分配される*。この投資商品の購入により、投資家は社会的責任行動が充実していると判断された複数の事業者に投資することになる。
 金融機関から依頼を受けた調査機関は、投資先の候補として考えられる事業者に対して各社の社会的責任行動に関する質問状を送付し、その回答を分析して優劣を付け、依頼主に提供するというのが一般的な手法である*。ただし・・・・は、、この手法による結果が、各事業者の担当部署がいかに充実した回答を作成できるかに左右されてしまうとして疑義を呈している**。

 大手金融機関は一般的に、個人向け投資商品の一部としてこのような社会的責任投資商品を販売している。日本の場合この形態での投資が社会的責任投資の大部分を占め、その規模は約5,200億円(2009年9月時点)である*。2000年より投資信託商品の数は増加を続け(2000年3月は5本であった)、2009年9月の時点では83本に達している。その間景気の波に対応しつつ投資額も逓増していることがわかる。後述するモーニングスター社によると、全国規模の投資信託会社が提供する商品として挙げられている27商品(2009年末時点)には環境分野での貢献度を重視して投資先企業が選定された商品が多く、環境に関連した名称が冠されているものが多い。*
 総合金融情報の提供を行うモーニングスター株式会社は、2002年より上場企業の社会的スクリーニングに基づいて選定した投資銘柄の株式指数である「モーニングスター社会的責任投資指数」を公表している*。投資情報を広範囲の投資家に提供する企業がこのような指標を開発したことは、社会的責任投資に関する情報の需要が高まったことを表していると考えられる。また同社の運用成績評価によると、社会的責任投資商品は標準を上回る成績を残していることが明らかになっている*。

 これらを受け、日本での社会的責任投資の普及・調査活動を行うNPO法人社会的責任投資フォーラムは、個人の環境意識が高いこと・莫大な個人金融資産があることを挙げ社会的責任投資の拡大の可能性は大きいとしている*。

 他方、日本の国際環境NGO・A SEED JAPANは、同NGO発行のレポート「SRIファンドは本当にエコなのか?」で、社会的責任投資商品の投資先として選定された企業の中に環境・社会面で不適切な要素を持つ企業が多く含まれていることを指摘している。これは日本の金融機関が提供する社会的責任投資商品がポジティブスクリーニングによってのみ構成されているからであり、ネガティブスクリーニングの観点が不足していることに起因することが明らかである。*

 しかし日本の社会的責任投資額は、欧米に比べ極めて小規模である。個人投資家に支えられる日本の約5,200億円に対し、機関投資家の社会的責任投資姿勢が明らかになっているアメリカは約306兆円、欧州市場は約344兆円(いずれも2007年)*と、桁違いの市場が築かれている。

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